クーラーの効いた部屋でインプットに集中したい君に捧げる3冊。

AI要約

『ドライブ・マイ・カー』と『悪は存在しない』の大成功によって、濱口竜介監督が、「知る人ぞ知る」から「ご存知」の監督として注目を集めるようになった。彼の映画批評文での優れた功績にも光が当たるべきだ。論考を通じて、小津安二郎の作品などを深く掘り下げるその姿勢に畏怖を抱かせる。

日本人が戦後、アメリカとどのように向き合ってきたかを探求した音楽雑誌や出版分野の分析が興味深い。同様の手法で韓国という「他者」について考察するのも面白いだろう。フィジカルな紙媒体の重要性も再認識する。

ロシア文学者によるウクライナ侵攻に関するエッセイ集。日常の出来事から大きなメッセージへとつながっていく筆致は心地よく、国籍や文化が人々を結ぶ一方で、戦争がそれを脅かす現実も表現されている。

クーラーの効いた部屋でインプットに集中したい君に捧げる3冊。

『ドライブ・マイ・カー』と『悪は存在しない』の大成功によって、「知る人ぞ知る」から「ご存知」の監督になった感のある濱口竜介監督だが、彼が映画の批評文においても優れた功績を残してきていることは、まだあまり知られてないかもしれない。しかし、本書に収録された数々の論考を読めば、それは火を見るより明らか。実際、小津安二郎の『麦秋』における杉村春子のひと言のセリフを巡って、ひたすら画面とだけ向き合い(ここ重要!)、その演出的な凄みを見出す筆致には畏怖を覚えるはず。講演やレクチャーの文字起こしを収録した『他なる映画と 1』と合わせてぜひ。

戦後、日本人はアメリカという「他者」といかに向き合ってきたのか。その馴染み深いテーマに、1969年創刊の音楽雑誌「ニューミュージック・マガジン」をはじめ、出版分野の分析で切り込むという視点が新鮮。同じ手法で韓国という「他者」について考えたら面白そうだと思いつつ、K-POP需要の中心がSNSだとしたらそれが40年後にアクセスできる資料として残っている可能性は限りなく低い。その意味で、フィジカルとして残る紙媒体は重要だなぁと、改めて。

ロシア文学者の著者が、ロシアによるウクライナ侵攻直後から綴ってきたエッセイをまとめた一冊。日常の些細なワンシーンから、みるみる大事なメッセージへと繋げられていくその筆致は、坂を転がりながらだんだんと大きくなっていく雪だるまのようで心地いい。人と人が仲良くなるのは、例えばある同じ文化が好きだからであって、同じ国籍だからではない。もしその仲良しの輪が国の都合で引き裂かれる戦争のような事態に巻き込まれたなら、脱走せよ。不思議なタイトルには、そんな祈りが込められている。

text: Keisuke Kagiwada