「めんどくさいし、入らんでも死なへん」1ヵ月にわたる「入浴拒否」を解決した、認知症ケアに欠かせない「考え方」
認知症の患者がお風呂に入らない理由について、介護施設に入居しているタナカさんの事例を通じて解説されています。
タナカさんは昔は温泉好きだったが、現在はお風呂嫌いとなり、その理由や過去の思い出が語られています。
介護者としては、認知症患者の行動背景を理解し、適切なサポートやアプローチが必要であることが示唆されています。
アメリカ、中国でも講演実績のある「認知症講師」渡辺哲弘氏が、認知症患者の「行動のメカニズム」を解説します。認知症のお年寄りは、なぜ介護者を困らせるような「行動」をすることがあるのでしょう?
背景には、「周りに迷惑をかけたくない」、「みんなの役に立ちたい」、にもかかわらず、認知症の症状が邪魔をして周囲に迷惑をかけてしまうというジレンマがありました。
ケアの新たな指針となる渾身の書き下ろし『認知症の人は何を考えているのか』(渡辺哲弘著)より、介護のヒントになる部分を抜粋して紹介します。
『認知症の人は何を考えているのか』連載第1回
介護施設に入居している認知症のタナカさん、実はもう1ヵ月もお風呂に入っていません。
職員は何かと働きかけてはいるのですが、いつもつれない答え…
「お風呂入りましょ!今なら一番風呂ですよ~」
タナカさん「いいわ、めんどくさいし 入らんでも死なへんしな」
「困ったわ…」
「タナカさん?またお風呂入ってもらえなかったの?」
「ハイ……タナカさんは「死なへん」て言うけど、やっぱり健康にもよくないですし…」
「そうよねぇ...他の入居者さんからも「何か臭う」って言われるようになってきたし…」
とはいえ、大の風呂ギライというわけでもなさそうです
入居前、タナカさんは息子夫婦と同居していましたが
「父は昔は温泉が大好きで、休みの日はよく出かけてました。家でも普通に入浴していましたよ」
と ご家族は言うのです
そんなある日、3時のお茶の時間のこと…テレビを見ていたタナカさんが、ふと…
「見てみぃ!気持ちよさそうやなぁ」
と言うのです!
画面には温泉でリポートするタレントの姿、タナカさんはそれを指さして…
「若いころは温泉が好きで、休みのたびに山のなかの温泉に行ったもんや。酔っぱらって失敗したこともあったなぁ…」
いろいろな思い出を語ってくれました