なぜホンダは「短距離走行モビリティ」を開発したのか? Honda CI開発責任者に聞いてみた!

AI要約

ホンダが開発したHonda CIマイクロモビリティにはCiKoMaとWaPOCHIの2種類があり、それぞれ異なる用途に適している。

CiKoMaは手荷物運搬用ロボットのWaPOCHIと違い、利用者を乗せて自動運転で移動し、音声操作で目的地設定も可能。

ホンダのAI技術により、CiKoMaとWaPOCHIは周囲の状況を認識し、安全かつスムーズな移動を実現している。

なぜホンダは「短距離走行モビリティ」を開発したのか? Honda CI開発責任者に聞いてみた!

自動車ライター大音 安弘が、今みんなが気になる次世代モビリティの開発背景や魅力に迫る連載。第5回目はホンダが独自に開発した、人とわかりあえる人工知能「Honda CI」を搭載した2種のモビリティを紹介する。

自動運転は将来的な交通インフラの救世主として期待されており、海外ではすでに自動運転タクシーの事業化も始まっている。しかし日本の自動運転は、技術開発や法の整備が追い付いておらず、世界から出遅れているのが現状だ。

そこでホンダは自動運転に加え、ストレスフリーな移動をサポートし、身近な移動の課題を解決するためのモビリティを開発。こうして誕生したのが「Honda CI(ホンダ・シーアイ※)マイクロモビリティ」だ。

※CIはCooperative Intelligenceの略語で「協調人工知能」を意味する

現在ホンダが実証実験を行っているHonda CIマイクロモビリティは、「CiKoMa(サイコマ)」と「WaPOCHI(ワポチ)」の2種類だ。CiKoMaは1名から複数名までの乗車を想定し、専用のスマホアプリを通して音声で操れる小型4輪車で、運転操作はCiKoMaが行い、歩道も走れるように設計されている。そしてWaPOCHIは利用者を登録することで周囲の人と識別し、愛犬のように利用者を追従・先導してくれる手荷物運搬用ロボットだ。前者は短距離の移動も困難な人を中心に、誰でも移動できる手段として、後者は高齢者や荷物の多い子連れの親のサポートに適している。

このHonda CI マイクロモビリティを用いた実証実験は、2022年11月より茨城県常総市でスタート。2024年2月からは茨城県にある“アグリサイエンスバレー常総”で一般人も試乗できる実証実験を開始し、誰でもCiKoMaとWaPOCHIを体験できるようになったので、筆者も体験してきた。

※WaPOCHIは6月より実証実験を休止中(再開時期未定)

2つのマイクロモビリティに共通するのは、人とわかりあえるホンダ独自のAIを搭載していることと、通常の自動運転に必要とされる高精度地図を使わないことだ。GPSなどを使わず地図無し(マップレス)とした理由は、地図だけでは道路以外の場所を進むことができないからだという。それをCiKoMaではカメラやセンサーなどで周囲を認識し、走行可能な場所かシステムに判断させ、完全自動運転を実現させている。

CiKoMaの呼び出しや目的地設定、降車場所などは音声で指示する。音声操作は今やSiriやGoogleアシスタントなど、スマホでの音声認識活用が進んだことで、初めて利用する人にも使いやすいシステムだ。

実際に「迎えにきて」と呼びかけることで迎えに来てくれたが、かなり未来的な体験でワクワクした。今回の実証実験ではCiKoMaに向かって手を振ることで、筆者を認識し、目の前で停車をしてくれた。また乗車中でも音声呼びかけで降車場所を変更することもできた。なお、今後は自身の周辺に他の人がいても、CiKoMaからユーザー特定のために質問をする技術も追加していくそうだ。

CiKoMaは最高速度6km/hとゆっくり進み、余裕があるからか周囲の人や車両をしっかりと検知し、徐行や迂回、停車をスムーズに実行してくれたので、乗車中に不安を感じることはなかった。

次は、まるでペットのように愛嬌があるWaPOCHIを体験した。WaPOCHIは登録した人の特徴をカメラで認識し、周囲に人がいても利用者を識別し、追従・先導をこなすマイクロモビリティだ。WaPOCHIは目的地を設定する必要がなく、本体の前後に搭載したカメラが常に利用者の動きを追うことで、利用者が行きたい方向を推定しながら動く仕様が面白い。

当然、WaPOCHIは前方から向かってくる人や障害物も避ける。先導時は利用者の歩行を妨げないように少し斜め前を進み、人混みの中では利用者が歩きやすいように正面を進む。その様子はさながら忠犬のようだ。手荷物をWaPOCHIの収納スペースに入れれば利用者は手ぶらで歩けるので、商業施設などで実用化されれば便利そうだ。