「せっかくマイホームを手に入れたのに、こんなことになるなんて」一級建築士が警鐘を鳴らす、後悔する「残念な間取り」

AI要約

日本の住まいの満足度は33%……不満の理由は”間取り”でした。一見すると、おしゃれで素敵そうに見える間取り。でもそこには大きな落とし穴が隠れていることも。住んでみないとなかなか見えてこない隠れた暮らしにくさ。

アパレルや食品、エンタメ業界では、日々、様々な流行が生まれ変化しているように見えます。最新の流行は、SNSや情報番組での定番ネタです。

毎年4月に開催される世界最大規模の家具見本市、ミラノサローネでは、家具や住宅設備、インテリアの最新トレンドを見ることができます。これらは、比較的、更新しやすい部分ですが、家の骨格となる「間取り」が、短期間で期限切れになるのは困ります。

「せっかくマイホームを手に入れたのに、こんなことになるなんて」一級建築士が警鐘を鳴らす、後悔する「残念な間取り」

日本の住まいの満足度は33%……不満の理由は”間取り”でした。一見すると、おしゃれで素敵そうに見える間取り。でもそこには大きな落とし穴が隠れていることも。住んでみないとなかなか見えてこない隠れた暮らしにくさ。『この間取り、ここが問題です!』では、いままで3000件以上の間取りを診断してきた一級建築士・船渡 亮氏が、25の具体的な間取りからその問題点を指摘。より住みやすい間取りを提案します。

アパレルや食品、エンタメ業界では、日々、様々な流行が生まれ変化しているように見えます。最新の流行は、SNSや情報番組での定番ネタです。一方、住宅は、土地購入から設計、工事、引き渡しまで1年程度はかかり、かつ30年以上暮らすことが多いので、1~2年で廃れる「流行り」を採用することはできません。

毎年4月に開催される世界最大規模の家具見本市、ミラノサローネでは、家具や住宅設備、インテリアの最新トレンドを見ることができます。これらは、比較的、更新しやすい部分ですが、家の骨格となる「間取り」が、短期間で期限切れになるのは困ります。そんな保守的な住宅業界ですが、10年くらいのスパンで見るとトレンドがあるようです。私が住宅設計を始めた1990年代は、吹き抜け付き玄関が流行しました。バブルの影響で豪華さが好まれたのだと思いますが、現在はたまに建売住宅で見かけるくらいです。

2000年頃は、キッチン動線の延長に洗面脱衣室を配置することが流行りました。家事動線が注目され始めた頃で、専業主婦が効率的に料理や洗濯することを想定しています。

2010年頃からシューズクローク、2015年頃からはランドリールームやキッチン横ダイニング、2020年からは玄関手洗い器が注目されています。これらは社会的な背景が影響しており、「その時代を象徴する間取り」が流行しているようです。コロナ禍で「玄関手洗い器」が注目されたのは、わかりやすい事例です。

流行を取り入れること自体はよいのですが、注意すべきは実際の暮らしやすさです。洋服なら実物を試着できますが、間取りは未体験のまま採用となります。できればその間取りを採用している完成物件やモデルルームを実見したほうがよいです。一例をあげます。

コロナ禍に、ある住宅会社が玄関脇に小型手洗い器を設置した住宅商品を発売しました。確かに玄関で手を洗えるのはラクそうですが、提案間取りを見て驚きました。なぜなら、玄関から5歩の位置に(その小型手洗い器とは別に)洗面室がある間取りだったからです。しかも、その小型手洗い器は、石鹸置き場もタオル掛けもない、ボウルが小さいので床に水が飛び散りそう、そもそも小さい子には使いにくいという代物でした。

「玄関手洗い器」というワードからは、「素敵そう」「清潔そう」といった雰囲気が醸し出されていますが、その目的は「帰宅したらすぐ手洗いできる」ことです。他で目的を達成できるなら「玄関手洗い器」を設置する必要はありません。

一級建築士。1971年神奈川県生まれ。法政大学卒業後、1995年から設計事務所・工務店・建設会社で150件以上の住宅・建築の設計・デザインを行う。2013年に「かえるけんちく相談所」を立ち上げ、ブログ・メルマガで家づくりの情報発信を開始。翌年、在籍していた工務店が倒産。失意の中、主夫をしている時にメルマガ読者の紹介をきっかけに『人生が変わる片付けのルール』(永岡書店)を監修。2017年に間取りのセカンドオピニオンとして独立。現在、LINE・メルマガ会員は1万人、間取り診断数は3000件を超える。施主が注文住宅で「理想の暮らしを実現」できるように、雑誌・Web記事の監修・執筆も行っている。