短眠国家の日本を救う、「20分間の昼寝」と“あの”トレーニング

AI要約

睡眠の質が健康や寿命に影響を及ぼすことが明らかになっており、ただ長く眠るだけではなく質を重視すべきである。

長すぎたり短すぎたりする睡眠時間は健康に影響を与えることが示されており、適切な睡眠時間とは何かを考える必要がある。

学校週5日制の導入によって生じるソーシャル・ジェットラグが睡眠リズムの乱れや不登校の原因となる可能性がある。

 漠然と「睡眠時間は長いほうが健康に良い」と思っている人も多いのではないだろうか。しかし近年、ただ長く眠れば良いのではなく、睡眠の質が健康や寿命に大きな影響を及ぼすことが分かってきた。日本の睡眠時間の短さがニュースになることも多いが、問題解消に「昼寝」をうまく活用することを提唱する専門医がいる。

 (東野 望:フリーライター)

■ 睡眠時間は長すぎても短すぎてもいけない

 多忙な日本人の睡眠時間は、この半世紀で少しずつ短くなってしまっている。しかし、ただ単に長時間眠ればいいのかというとそうでもないようだ。

 睡眠専門医院・スリープクリニック調布院長で米スタンフォード大客員教授も務める遠藤拓郎氏は、近著の『最強の昼寝法「スーパーパワーナップ」~日本人の睡眠処方箋~』(扶桑社)で意外な事実を明らかにしている。

 睡眠に関しては認めたくない3つの事実があります。

それは、「睡眠時間が長いと早く死ぬ」、「退職をすると睡眠薬が増える」、「ゆとり教育で不登校が増える」です。

 40~79歳の男女約11万人を対象に、2004年に結果が発表された調査によると、「7時間睡眠」が最も死亡率が低いことが明らかになっている。それより短くても、逆に長くても死亡率は上昇するとの結果だった。

 さらに、睡眠が「4時間未満」という極端に短いグループと「10時間以上」という極端に長いグループを比較すると、「10時間以上」のグループの方が、「4時間未満」に比べて死亡リスクが高かったことがわかった。

 睡眠時間は人生のステージによって違いがある。

 会社勤めのビジネスパーソンだと、職場を去る65歳以降になると仕事がなくなり、好きなだけ寝られる環境になる。時間を持て余すと睡眠時間が延びる傾向にあるほか、高齢者の睡眠時間を長くしようと指導した結果、睡眠薬を使うケースもあるという。遠藤氏は「睡眠が長ければよい」という思い込みが、多くの弊害を生んでいると指摘している。

■ 学校週5日制と不登校との関連とは? 

 子どもにとっても睡眠時間は大きな問題だ。それは土曜日を休みとする週5日制が学校で導入されたことも影響しているという。

 公立の小中学校や高校で土曜日が休みになり始めたのは1992年。その後、毎週土曜が休みになる完全な週5日制になったのは2002年のことだ。

 すると、週末にゆっくりできるようになった児童・生徒たちに「ソーシャル・ジェットラグ」という問題が発生することになった。「ソーシャル・ジェットラグ」とは、平日は夜遅く寝て朝早く起き、休日は遅くまで寝ているという睡眠リズムのズレを表す言葉だ。

 単純に「長い時間寝る」ことだけを重視して、その質や内容について考えずに、睡眠管理の重要性を指導しないままいると、ソーシャル・ジェットラグを生み出してしまい、悪い睡眠習慣を作り出してしまいます。

 この睡眠リズムのズレは「体内時計」のズレにつながる。体内時計は、眠くなる時間や目覚めの時間を決める以外にも、ホルモンの分泌、心拍数、体温などの機能のタイミングを決めている。つまり体内時計が1時間遅れると、眠くなる時間も目覚める時間も1時間遅れるということになる。

 その結果、生活リズムが乱れることで不登校が増えた可能性が考えられるというのだ。実際に、土曜日も休みで生活リズムの乱れやすい公立の方が、小中学生の不登校率が高いことが分かっている。