盗撮、お触り、LINE…女性社員にキモい行動を繰り返す上司に裁判所が下した判決

AI要約

セクハラ上司が女性社員を盗撮し、セクハラ行為を働いた事件について、裁判所が慰謝料の支払いを命じた経緯が明らかになった。

セクハラ上司は女性社員に対し、不適切な行動を繰り返し、最終的には諭旨退職処分を受けた。

損害賠償請求訴訟において、裁判所がどのような判断を下したかについて、詳細が示されている。

盗撮、お触り、LINE…女性社員にキモい行動を繰り返す上司に裁判所が下した判決

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。

上司が女性社員を盗撮していた事件です。あとは、タクシー内で太ももを触ったり、LINEで「本当に好きだXさん」「ありがとう。好きだ(音符マーク)」と送信しました。

状況を想像するだけで虫唾が走る気持ち悪さですが、上司にはどんな鉄槌が下されたのでしょうか。

以下、わかりやすく解説します。(東京地裁 R5.5.29)

※ 実際の判決を基に構成

※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換

※ 争いを一部抜粋して簡略化

▼ 会社

・写真用フィルターや映像用レンズの製造販売などを行なう会社

▼ Xさん(女性)

・昭和41年生まれ

・事務職(コールセンター運営業務)

▼ セクハラ上司

・コールセンターの部長

▼盗撮

セクハラ上司は、Xさんと2メートル以上離れた位置から、Xさんの横顔や後ろ姿をカメラや携帯電話で撮影していました。なんと、1年半くらい。

盗撮について、Xさんはセクハラ上司を詰問したことがありましたが、セクハラ上司は否認しました。が、のちに認めました。

▼女子トイレの前で不審行動?

―― セクハラ上司は何をしていたんですか?

Xさん

「セクハラ上司が女子トイレの扉前で耳をつけて立っていたんです」

(※ 裁判でセクハラ上司はこれを認めていません)

Xさんは上司に報告。「女子トイレの前に立っていること自体が異常なことと思うのは、私だけではありません。さすがに、これ以上は耐えられません」と報告しました。

その後、会社は、女子トイレ前の廊下に監視カメラを取り付けました。約1か月撮影していたのですが、セクハラ上司の不審な行動がなかったため撤去しました。

▼ 太ももを触る

セクハラ上司の送別会の後の出来事です。午後10時ころにお開きとなり、Xさんは、帰宅するためにタクシーに乗りました。なんと、セクハラ上司と2人です。危険すぎます。

案の定、車内で、セクハラ上司は、Xさんの手や太ももを触りました。Xさんは「やめてください!」と制止しましたが、セクハラ上司はXさんに覆いかぶさって肩や腰あたりを抱き寄せるような動作をしました。

Xさんは耐えきれず、タクシーを降り、歩いて帰宅しました。

その後、Xさんの携帯にセクハラ上司からLINEが届きました。謝罪かと思いきや「本当に好きだXさん」「ありがとう。好きだ(音符マーク)」

なんだコイツ!

▼ セクハラ上司の謝罪

翌日、酒が抜けたのでしょうか。セクハラ上司はXさんにLINEを送ります。

(↓ 文章にヘンなところがありますが、以下原文ママです)

セクハラ上司

「昨日はごめんなさい」

Xさん

「精神的疲労により明日からお休みさせていただきます」

セクハラ上司

「大きなショックを与えてしまい大変申し訳ありません。今後は一切あなたへの関与致しません。早く良くなることを祈っております。本当に申し訳ありません」

「総務に連絡するのだけは堪忍してください」

「身勝手な事は充分分かってます。今月末で辞めます」

▼ セクハラ上司、さよなら

セクハラ上司は、会社から諭旨退職処分を受けて退職しました。

Xさんは精神的に追い込まれたため休職。その後、セクハラ上司と会社に対して損害賠償請求訴訟を起こしました。

裁判所は次の判決を下しました。

「セクハラ上司は慰謝料50万円を払え」

「会社は5万円払え(写真撮影について使用者責任)」

いったい、どの部分が認められてどの部分が認められなかったのでしょうか?

後編で詳細とアドバイスを紹介していきます。

取材・文/林 孝匡(弁護士)

【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。法律コンテンツを作ることが専門の弁護士。