「座ったまま警備」で応募増えるか 警備会社のみならず受け入れ施設も「配慮」の動き

AI要約

働き手不足に対応して、企業が労働条件の改善に取り組んでいる。接客業や警備業界で座ることを許可する取り組みが始まりつつあり、デジタル化による労働条件改善も進んでいる。

座ることを許可する取り組みが広がる一方で、消費者側にデメリットも生じている。これまでのようなサービスの提供には限界があり、消費者も変化を受け入れる必要がある。

将来的には人手不足に対応するため、サービスの在り方や労働条件について再考する必要がある状況にある。

「座ったまま警備」で応募増えるか 警備会社のみならず受け入れ施設も「配慮」の動き

 働き手不足から人材確保が課題となる中、企業は労働条件の改善に動いている。立つのが当たり前だったレジ接客でイスに座ることを許可する店が登場したが、この取り組みは接客業だけではない。AERA 2024年7月29日号より。

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 働き手不足を背景にした同様の取り組みは、他業種でも始まる。リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志さんによると、「座ったまま警備(座哨警備)」の試みも出てきつつあるという。警備といっても交通誘導の警備から現金輸送警備までさまざまだが、座哨警備を導入しやすいのは施設警備。人手不足の中で警備員の高齢化が進み、警備会社のみならず受け入れ施設の方でも「配慮」する動きが少しずつ出てきているのだ。

 ただ、警備会社はさまざまな現場の案件を受注し、現場ごとに警備員を派遣するビジネス。受け入れ先が座哨警備を受け入れるかどうかの確約が常にできるわけではない。

「座ったまま警備を始めたことで警備員への応募が増え、働き手不足が解決するというような目に見える効果が出るのはまだ先だと思います」

 このところ進む小売店へのセルフレジ導入や、飲食店や宿泊施設でタッチパネルでのセルフオーダーなど、デジタルを用いて「従業員の負担を少し下げてあげよう」という労働条件の改善も、広い意味で言えば人手不足解消という文脈での重要な要素と位置付けられると、坂本さんは指摘する。

「過疎地域の物流で、これまで一戸一戸配送していたのを『集配所にまとめて置いておき、あとは住民の方が取りに来て運んでくださいね』といった事例も聞くようになりました」

■サービスは実質低下

 しかし一方でデメリットもある。「それを負うのは消費者の側だ」と坂本さんは言う。

 これまでは労働者側が至れり尽くせりのサービスをしてくれた。消費者にとってはセルフレジよりも有人レジの方が、座っているレジの人よりも立っている人の方が、より丁寧で機動的であることは確か。実質的なサービス水準はやはり低下していくことになるかもしれない。

「でも少子高齢化が進んで働き盛りの人が減り、長期的に構造的な人手不足が続く中で、以前のような至れり尽くせりのサービスを消費者が期待するのはもう難しいでしょう。『諦めるものと、そうでないもの』をしっかり区分けして、サービスというもののあり方を考えるべき局面に来ていると思います」

(編集部・小長光哲郎)

※AERA 2024年7月29日号より抜粋