グランドキャニオン、ドーバー…北海道でぶらり地層ウオッチング 乙部町 探訪

AI要約

乙部町は、東洋のグランドキャニオンや東洋のドーバーに例えられる美しい地層があり、海外旅行気分を楽しめる観光地である。

地質学的に特徴的な地層が町内に6カ所も存在し、数百万年前の海底活動が隆起して地上に現れたことがその背景にある。

観光客も増加傾向にあり、特にシラフラと呼ばれる白い断崖は人気の撮影スポットとなっている。

グランドキャニオン、ドーバー…北海道でぶらり地層ウオッチング 乙部町 探訪

「東洋のグランドキャニオン」に「東洋のドーバー」。北海道に外国の有名景勝地になぞらえられる景観を楽しめる町がある。

道南部の日本海側に位置する乙部町。海岸沿いの国道229号を走っていると、そびえ立つ絶壁が目に飛び込んできた。

米国の峡谷グランドキャニオンに見立てられる「館の岬」は、約500万年前に噴火した海底火山の灰と黒い砂岩が交互に堆積し、地殻変動で隆起したものだという。きれいなしま模様を描く地層が目をひく。

町南部の滝瀬海岸には高さ約15メートルの白い断崖が500メートルほど続く。「シラフラ」と呼ばれるこの絶壁は、火山が噴き出した白い軽石が堆積してできたという。英国のドーバー海峡の崖に似ていると、人気の撮影スポットになっている。

町では海沿いで5カ所、内陸で1カ所の計6カ所で地層を間近に観察できる。町郷土資料室の学芸員、藤田巧さん(54)は「小さな町なのに、地層観察のお得パックみたいにそろっている」と語る。

なぜ乙部では、これほど多様な地層が見られるのか。

道立総合研究機構の広瀬亘研究員(地質学)によると、現在の乙部町のあたりは数百万年前は海底だったという。その頃は周辺の火山活動が活発で、海底には砂や泥だけでなく、溶岩や火山灰などさまざまな堆積物がたまった。その後、地殻変動で地盤が隆起し、それらが陸上に現れたのだ。

地層を目当てに町を訪れる観光客も増えている。町によると、シラフラの訪問者はこれまで年間3000人程度だったが、昨年度には2万人弱が訪れた。

「コロナ禍は明けたが、物価高や円安で国外に行きにくい状況なのも一因では」と町産業課の担当者。

数百万年を超える悠久の時が造り出した自然の芸術。珍しい地層を巡って、国内にいながら海外旅行気分を味わう夏休みはいかがだろうか。

(写真報道局 鴨川一也)