「もっと揺れたと思ったのに…」 県内最大震度「4」の4月17日夜、熊本市中央区は「1」 計測どうなってるの?

AI要約

4月17日夜、愛媛や高知で震度6弱の地震があり、熊本県内でも最大で震度4を観測した。

今年1~6月、熊日が掲載した熊本市の地震は16回。中央区の震度が最も低いことが多いことが特徴。

中央区の観測点の地盤が揺れにくいことが震度の低さに関係している可能性がある。

中央区と他の区の震度差を検証するために地盤増幅率の調査が行われ、中央区の地盤は比較的揺れにくいことが示唆された。

地質学者は、他の地域でも実際の揺れと観測された震度に差が生じる可能性があると指摘。

「もっと揺れたと思ったのに…」 県内最大震度「4」の4月17日夜、熊本市中央区は「1」 計測どうなってるの?

 4月17日夜、愛媛や高知で震度6弱の地震があり、熊本県内でも最大で震度4を観測した。その1日後、「熊本市中央区の震度は低い気がする」と、同区の女性会社員(44)から熊日のSNSこちら編集局(S編)に疑問が寄せられた。専門家の助言を基に検証すると、ある結果にたどり着いた。

 この地震で中央区は震度1で、別の4区は震度2~3だった。女性は「以前、熊本市長がSNSで『(中央区の)市役所でも揺れを感じた』と投稿した地震でも、(震度が観測されたのは西区のみで)中央区は震度0だった。中央区と、それ以外の区では差がある」と指摘する。

 今年1~6月、熊日が掲載した熊本市の地震は16回。うち15回は全5区の中で中央区の震度が最も低かった。残る1回は中央区のみで震度が観測された地震。中央区は、ほかの4区よりも震度が観測されにくいのだろうか。

 まずは震度を計測する機材に違いを確認した。中央区の震度計は、熊本市が同区大江の市消防局に設置。一方、西区は気象庁、東区は国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)、北、南の2区は県が設置している。「メーカーが異なる可能性はあるが、いずれの機材も同一の検定基準をクリアしており、能力は同じ」と熊本地方気象台の田中宏樹さん(44)。中央区の震度計は年に1度、点検しており、田中さんは「ほかの区と点検頻度は変わらない」と不具合を否定する。

 ただ、女性の疑問に対し「実際に住民が感じた揺れと、発表された震度に差が出ることはある」と田中さんは認める。観測点より住まいの地盤が揺れやすいことが想定されるという。

 中央区の観測点の地盤が揺れにくく、区内のほかの地域が揺れやすいのではないか-。そんな仮説を伝えると、田中さんは「表層地盤増幅率に着目してみては」と助言してくれた。

 表層地盤増幅率とは、地震時の表層地盤の揺れの大きさを数値化したもので地盤の揺れやすさを示す。防災科研のウェブサイトで公開されており、7段階に分け、色で判別できる。

 このサイトに全5区の観測点の住所を入力して、地盤増幅率を調べた。数値は大きいほど揺れやすい。熊本市の観測点で最も揺れにくいのは北区で、7段階の下から2番目(0・8~1・0)。次いで中央区は4番目(1・2~1・4)に当てはまった。

 ただ、北区は観測点以外でも区内に増幅率の段階が同じ地点が多くあるのに対し、中央区は、観測点より揺れやすい数値を示す地点が多く、同区の南部ではさらに増幅率が高い地域が広がっていた。

 つまり中央区の観測点は、区の中で比較的、揺れにくい場所に設けられていて、ほかの区と比べると、実際、住民が感じた揺れより、震度が低く出やすいと言えそうだ。

 地質学を専門にする東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授(57)は「地震の揺れはまず震源地からの距離が関係するが、最終的には地盤に左右される。熊本市中央区と同じように、実際に感じる揺れと震度が違うという疑問は、全国のほかの地域でも起こっているかもしれない」と話していた。(東有咲)