災害救助犬との捜索でも通信は命綱 家族の切なる願いは伝わる、全力を尽くしたい

AI要約

1月3日17時過ぎ、愛犬であり信頼を寄せる災害救助犬のココと共に初めての捜索を終えた河畠大四さん。その後、輪島市門前町での様子や、災害に遭った地元住民や避難所での様子を綴っている。

ドラッグストアや輪島市役所門前総合支所を訪れた河畠さんは、被災地の状況や、地元の人々の姿に心を動かされる。捜索活動に全力を尽くす決意を新たにする。

地元の人たちの切なる願いや応援に支えられながら、河畠さんは災害救助犬と共に再び捜索活動に身を投じる決意をする。

災害救助犬との捜索でも通信は命綱 家族の切なる願いは伝わる、全力を尽くしたい

 ジャーナリストで災害救助犬のハンドラーとしても活動する河畠大四さんが、愛犬であり信頼を寄せる災害救助犬の「ココ」(ボーダーコリー/メス11歳)との生活に込められた、喜びや挑戦を伝えていきます。

 1月3日17時過ぎ、私たち日本救助犬協会の能登出動チームは、災害救助犬による石川県輪島市門前町での初めての捜索を終えた。待機場所の輪島消防署門前分署に戻ってくると、「本日の捜索はもうない」とのことだったので、愛犬で災害救助犬のココを軽く散歩させた。

 門前町が暗闇に包まれる中、遠くの方にこうこうと輝く建物が見える。町内は停電しているので自家発電による明かりだろうが、どんなところなのか行ってみようということになった。

 車で5分ほど。そこはドラッグストアだった。国道249号沿いに輪島市に入って来てここまで、一軒もお店は開いていなかった。

 中に入ると、棚から床に商品が落ちたままになっている。まだ片付けられない状況なのだ。それでも、地元の住民たちが何かを買い求めに来たときに少しでも役に立つようにと店をあけているのだろう。レジにいる女性に自宅の状況を尋ねると、「近くにあるんですが、被災していて物が散乱してます。帰ったら片付けないといけない」と伏し目がちに話した。

 時折来店する地元のお客と話をしながら、自らも被災者である従業員が懸命に対応する姿に頭が下がる思いだ。

「がんばれ、ドラッグストア」と心の中でつぶやいた。

 近くには輪島市役所門前総合支所があることがわかった。何か状況がわかるかも知れず、向かってみた。数分で総合支所に着いたが、入り口の前の駐車場は亀裂が入って隆起していた。注意深く地面をみながら駐車する。

 ここは対策本部があるだけでなく避難所にもなっていて、被災した人たちが身を寄せ合っていた。暖房は石油ストーブがいくつか置かれているぐらいか。外よりは暖かいが、夜間の冷え込みを思うと、これで大丈夫だろうかと心配になる。

 避難してきた人たちは、私たちが災害救助犬を連れて行方不明者の捜索に来たことを知ると、こちらに深々と頭を下げた。家族や兄弟姉妹、親族や友人・知人に行方不明者がいる人もいるのだろう。何とか見つけてほしいという切なる願いがひしひしと伝わってくる。

 2021年7月、熱海の土石流災害のときも同じだった。

 災害現場のすぐ脇の坂道には自衛隊や消防、警察などの災害派遣の車が片側の車線にびっしりと駐車している。そのそばを、地元の人たちが断水のためポリタンクに水を入れて、きつい上り坂を自宅まで運んでいる。その中の一人の方が私たちのことを知ると、「よろしくお願いします」と言ってお辞儀をした。すると周りにいた人たちも一緒になって頭を下げる。

 その思いにどこまで応えられるだろうか。出動したからには、災害救助犬とともに全力を尽くして捜索しなければいけない。そんな思いが心の底から湧き上がってきた。身の引き締まる思いだった。

 それは今回の能登半島出動でも変わらない。