桃は「血」の滞りを改善して全身にしっかり血を送り届ける【健康長寿に役立つ高齢薬膳】

AI要約

ばね指やドケルバン腱鞘炎など手指の痛みについて解説。

手指の痛みの原因やシニアにおけるリスク、改善方法について。

桃の効能と薬膳レシピを紹介。

桃は「血」の滞りを改善して全身にしっかり血を送り届ける【健康長寿に役立つ高齢薬膳】

【健康長寿に役立つ高齢薬膳】桃

 指が痛くて力が入らない。強張ってモノがつかみづらい……。手指の痛みや動かしにくさは、「ばね指」と呼ばれる指の腱鞘炎であるケースが多くみられます。指を曲げたり伸ばしたりすると、ばね仕掛けのようにしか動かず、指の付け根に痛みや腫れ、熱感を感じる疾患です。親指、中指に現れる場合が多く、とくに朝に症状が強い傾向があります。

 ばね指は、指の曲げ伸ばしをする「屈筋腱」の通り道で、屈筋腱が浮き上がらないように押さえる働きがある「靱帯性腱鞘」が、炎症を起こしたことによって引き起こされます。手指の使い過ぎが大きな原因なので、スポーツや仕事で指を多く使う人や、家事の頻度が高い女性に多くみられます。また、女性の場合は更年期による炎症を抑制するエストロゲンの低下も原因のひとつとされています。そのほか、糖尿病や関節リウマチといった疾患がある場合にも発生するケースがあります。

 ばね指以外にも、手指の不調として「ドケルバン腱鞘炎」が挙げられます。こちらは、親指の使い過ぎが原因で、親指の手首側に強い痛みが現れる疾患です。

 シニアは加齢によって腱が弱くなり、損傷や炎症が起きやすいため発症しやすく、治りも悪くなる傾向があります。指の不調は、生活の質を下げる大きな原因になるもの。手にかかる負担を減らすとともに、食事も見直して対策を図りましょう。

 中医学において、手指の痛みは「血」の巡りが悪い状態で引き起こされやすいと考えます。身体の末端まで栄養が行き届かず、痛みを伴う症状が生じやすく、関節痛、頭痛、肩こりといったトラブルもみられがち。改善のためには、血流をアップする食材を取り入れることが大切です。

 おすすめはいまが旬の桃。桃の種の中身は「桃仁」と呼ばれ、血の巡りをよくする生薬として用いられています。果実にももちろん同様の働きがあり、血の滞りを改善して、全身にしっかりと血を送り届ける高い効能があります。

 また、子宮筋腫や生理痛など婦人科系トラブルにもよく、大腸を潤わせて便秘を改善する効能もあります。さらに桃は古来、「美容長寿の果実」とされ、美肌に威力を発揮するフルーツでもあります。とくにシミやクマ対策に役立ちます。

 薬膳において、桃にはフルーツの中でも身体を温める効果が高いという特徴があります。冷えが気になる人にもおすすめです。

 桃の手指の痛み改善効果を高めるには、同じく血行を促進する働きのある青魚や黒酢などと組み合わせるとよいでしょう。また、手指の痛みは体内の水分が過剰になっている場合に引き起こされやすくなります。余分な水分を排出する作用がある、セロリ、枝豆、はとむぎなども合わせて取り入れてみましょう。

■桃高齢薬膳レシピ

桃とサバのカルパッチョ風

 血流をアップする桃とサバ、体内の湿気を払うセロリを使ったサラダ。桃とサバは意外な組み合わせかもしれませんが、オリーブオイルや白ワインビネガーで驚くほどつながり、ワインのおともにぴったりの美味しさに仕上がります。

【材料】2人分

●桃 1個

●サバ缶 1/2缶

●セロリ  1/4本

●ディル 適量

●A(オリーブ油=大さじ1、白ワインビネガー・レモン汁=大さじ1/2、塩・こしょう=適量)

●ピンクペッパー 適量

【作り方】

 桃は半分に切ってから縦8等分程度に切り、器に並べてオリーブ油(分量外)をかける。ボウルにセロリ、サバ缶を汁ごと入れて、Aを加え混ぜ合わせる。桃の上にのせてディルとピンクペッパーを散らす。

(池田陽子/薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト)