猫背は治す必要がない…整体師が「猫背でゲームをする子どもを静観したほうがいい」と断言する理由

AI要約

「良い姿勢」とは一見の見た目だけではなく、身体と心がバランス良く整った状態を指す。

猫背も個性の一部であり、一時的になることもあり、無理に直す必要はない。

身心が整い、適度な緊張を保ちつつ、必要に応じてリラックスするサイクルが重要。

「良い姿勢」とはどのような姿勢なのか。整体師の片山洋次郎さんは「『気をつけ』のような立ち姿は一見良い姿勢に見えるが、本当の意味で良い姿勢ではない。人間がこのような『見た目』のいい姿勢を維持しようとするのは無理がある」という――。(第1回/全3回)

 ※本稿は、片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■“良い姿勢”とはなにか

 「良い姿勢」と聞いて、あなたはどんな姿勢を思い浮かべるでしょうか。

 背筋がピシッと伸びて、胸が開いている。

 背骨がシュッと立っていて、あごをきちんと引いている。

 そんな直立不動の姿勢をイメージする方は多いかもしれません。

 確かに、「気をつけ」をしているような立ち姿は、一見すると良い姿勢に見えます。

 私たちが学校や家庭で教えられたのも、まさにこの姿勢です。

 しかしそれは、本当の意味で良い姿勢ではありません。

 人間は、つねに変化している生き物です。1日働けば夕方には疲れるし、季節や年齢、生活環境などによって体調は変わります。その人間が、ずっと背筋を伸ばし、先ほどのような「見た目」のいい姿勢を維持しようとするのは無理があります。

 見せかけだけの良い姿勢は、「持続可能」ではなさそうです。形のみが整った姿勢ではなく、質的に「良い姿勢」とはどんなものか。

 私たちは日々の生活や仕事の中で、まっすぐな姿勢以外にも、必要に応じていろいろな姿勢や動作を繰り返します。集中するためにも、リラックスするためにも姿勢は大切です。

■猫背は決して“悪い姿勢”ではない

 はじめに、良い姿勢の反対、悪い姿勢の代表格「猫背」について考えていきます。猫背で悩んでいる人は非常に多くいますね。しかし、猫背が悪いとは一概には言い切れません。もともと体質的に猫背気味だという人も、実はいるのです。

 日本の代表的な整体技法である野口整体に、「体癖」という考え方があります。体癖では、体格や身体の動きの偏り、内臓の働き方の傾向から10の要素を抽出し、姿勢バランスの取り方を把握するスケールとしながら、姿勢バランスを見ます。「正しい」姿勢に矯正しようとせず、むしろ人それぞれの「癖」に沿って施術していくのが理想です。

 その中の特定の人たちにとっては、猫背は個性のひとつ。特別悪いことではありません。

 また、一時的に猫背になることは誰にでもあります。

 たとえば、緊張する打ち合わせが終わってデスクに戻り、お茶を飲みながらホッとひと息ついている時、休日に好きな動画を観ながらダラダラしている時。猫背になるのは、ごく自然なことです。

■「子どもが家でリラックスして猫背」は静観を

 子どもが家でリラックスして、ゲームをしている時も同じです。

 猫背になっている子どもを見ると、親は「姿勢が悪いよ」と指摘しがちですが、本人としては、学校での緊張がほぐれて脱力しているだけ。学校で集中している時はシャキッとしているものなので、「今はオフなんだな」と静観していればいいのです。

 このように、人間という生き物の特徴として誰でも、オンの時は身体を緊張させ、オフの時は気が抜けてダラッとなる。そう理解していれば、猫背を直さなければと思い込む必要はないというわけです。

 とはいえ、猫背では見栄えが悪いからどうにかしたいと思う人もいるでしょう。

 確かに背筋がピシッと伸びていれば、見た目は美しいかもしれません。しかしそれは、身心にとって本当の意味で良い姿勢とは言えません。

 実際、無理に背筋を伸ばしたり道具を使って矯正しようとしたりしても、猫背になんらかの必然性があれば、すぐ元に戻るだけです。

 身心が整い、場面に応じて適度な緊張を保ち、それが終わったら、ほどよくゆるむ。そういったサイクルで生活できるようになれば、その人らしい姿勢になります。周囲から見ても、その姿がもっとも魅力的に映るのではないでしょうか。