「ゆっくりじゃだめ?」忙しい現代にメッセージ カタツムリが主役の絵本、イラストレーターのニシノミサさんが初出版

AI要約

イラストレーターのニシノミサさんが初の絵本「ゆっくりじゃだめ?」を出版。カタツムリを主役に、忙しい現代社会でのゆっくりとした生き方を描く。

ニシノミサさんの経歴や創作の背景、絵本制作への想いが語られる。

自分らしく生きるためのメッセージを持つ絵本であり、カタツムリを通じて読者に心の余裕を提案する。

「ゆっくりじゃだめ?」忙しい現代にメッセージ カタツムリが主役の絵本、イラストレーターのニシノミサさんが初出版

 パソコンやスマートフォンとにらめっこして、誰もが忙しそうにしている現代。「ゆっくりじゃだめ?」というタイトルの絵本を福岡市のイラストレーター、ニシノミサさんが初めて出版した。主役はカタツムリ。子どもから大人まで、ほっこりできる作品だ。

 ニシノさんは福岡県直方市生まれ、埼玉県出身。結婚を機に30年前、福岡市へ移り住んだ。幼い頃、印刷会社を営んでいた父が時々持ち帰ってくる印刷ミスの絵本や写真集を見るのが好きで、絵を描き始めた。

 ある時、森の中でシカが振り向いている写真を見て自然や動物に興味を持つ。東京農工大農学部で環境保護を学び、「山道から外れたやぶの中で動植物調査に没頭して。楽しくてたまらなかった」と振り返る。

 卒業後は広告代理店やデザイン事務所で、夜もろくに眠らず働いた。

 「くだらない失敗が多くて。人に助けられて生きてきた」

 出産を経て、福岡に移住してからも広告代理店に勤めた。そんな時、子育てと仕事に振り回されている自分を見つめ直そうと訪れたパリ。出会った女性から「何のために仕事をしているの」と聞かれてハッとした。

 帰国すると独立し、マイペースで仕事に向き合うことにした。その後、単位制高校でイラストの授業を受け持って強く感じたことがある。勉強が早くできなくてダメだと言われて自信喪失したり、人のペースに合わせすぎたりして落ち込む生徒が多かった。

 「ま、いいかと自分を肯定するきっかけになるような絵本が描けたら」

 ゆっくり進むカタツムリを主役に考え、飼育してみた。すると夜中に「しゃくしゃく」と小さな音がする。葉っぱを食べる音だった。

 「ゆっくり、でも生きている」

 そんな実感から絵本は出来上がった。猫や豚、フクロウなどいろんな動物に出会いながら、自分探しの旅をするカタツムリ。どんな生き物も忙しそうだ。

 でも、雨空を見上げて気づく。素早く落ちて来る雨粒に交じって、ゆっくり落ちる雨粒が…。みんな風に揺られて幸せそう。カタツムリはゆっくり前へ進んでいく。

 「ひと呼吸置いて、にっこりしてもらえたら」。ニシノさんは、そう願う。

 「ゆっくりじゃだめ?」(梓書院)はB5判、24ページ。1430円。