精算日に遅れて交通費をもらえなかった…「バイトは融通が利かない」を肝に銘じよ!【65歳アルバイトの現実】

AI要約

警備員として働く65歳のアルバイトが、交通費の精算について苦労するエピソードを通じて、バイトとしての厳しさを痛感する

会社間のバイトや正社員との違い、労働基準監督署や労働相談情報センターに相談したが、小口の現金(交通費)に関して取り戻しの方法が限られていることが明らかになる

訴訟を起こすことも考えたが、金額に見合わないと諦めて泣き寝入りする結末を迎える

精算日に遅れて交通費をもらえなかった…「バイトは融通が利かない」を肝に銘じよ!【65歳アルバイトの現実】

【65歳アルバイトの現実】警備員編

 60代で職探しをする人にアドバイスしたいのは「バイトは融通が利かない」ということ。正社員のころと環境が違うのだ。

 私がそのことを痛感したのは都内の会社で警備員をしていたとき。交通費の精算がきっかけだった。

 警備員は自宅から勤務先まで直行・直帰する。往復の電車賃やバス代は自分の財布から払い、後日、精算して払ってもらう仕組みだ。

 問題はその書類をファクスで送る期日だ。交通費は毎月23日締めで月末の給料に上乗せして払ってもらう。交通費を精算する用紙には「23日までに送ってください。遅れた場合は認められません」と明記されている。

 私は忘れっぽいので、気がついたら23日を過ぎていたということがあった。警備会社に電話して事務員に「すみません。忘れてました。今からすぐにファクスします」と頼んだところ「受け付けられません」とはねつけられてしまった。

 正社員として働いていたときは会社の経理部に「ごめんね。精算を忘れてた」と説明すれば勘弁してくれたものだ。事前に催促もしてくれた。同僚同士の寛容さがあったからだ。

 だがバイト仕事はそうはいかない。雇用主とバイトの間に仲間意識はない。私の場合、1日あたりの往復交通費は1000円近くになる。15日も働けば軽く1万円を超える計算だ。

 そこで経理の女性に抗議した。

「交通費は働く人が小遣いの中から一時的に立て替えてるものでしょ。それを1日でも遅れたら1円も払わないのは理不尽ではないですか」

 これに対して彼女は「規則ですから、払えません。諦めてください」と取りつく島もない。

 ルールの厳しさは、警備会社はどこも同じようで、他社でバイトしている警備員の永井さん(仮名)は「俺の会社は交通費は25日締め。こちらも遅れたら払ってもらえないよ」と苦笑いしていた。

 永井さんによると、警備会社は戦後公営ギャンブルの用心棒をしていた人たちが参入した業種といわれる。なかにはアウトローの雰囲気が漂う会社もあり、文句を言いたくてもたじろいでしまいがちだ。

 だけど私は納得がいかない。たとえ1万円ちょいでも自分のカネを取り戻したい。そこで警備会社がある区の労働基準監督署に電話で相談してみた。結果は私の期待を裏切るものだった。

「労基法は給料を支払ってくれない事業者に行政指導できますが、交通費などの小口の現金については適用されません」

 電話の向こうで担当者が申し訳なさそうに言う。ガーン! そういうことだったのか……。

 それでも諦めがつかないので東京都労働相談情報センターに問い合わせたら、やはり同じ回答だった。

 要するに現在の法律には交通費を取り戻せる条文はない。「払いません」と堂々と言い切ることができるわけだ。

「ということは泣き寝入りするしかないですね」

 私が言うと担当者は、

「お金を取り戻す方法としては民事訴訟がありますよ。雇用契約書に『23日まで書類を出さないと交通費を払わない』と明記されていないのであればあなたが有利かもしれません」と教えてくれた。少額訴訟で戦ってみてはどうか、裁判で勝てる可能性もあるというのだ。

 確かに一理ある。だけど、たかが1万数千円のために訴訟を起こすのも面倒だ。かくして私は諦めた。諦めて泣き寝入りすることに決めた。

(林山翔平)