日本人は死ぬ瞬間が「1番金持ち」…アメリカ人とまったく異なる「ゼロで死ぬ」の意味
家康ゆかりの久能山東照宮には、金の生る木があり、多くの人が訪れている。
アメリカの大富豪トランプや、金に執着する人々についても言及されている。
金を全て使い切ることを提唱する『DIE WITH ZERO』に触れ、日本とアメリカの金融状況の違いが示唆されている。
江戸幕府の礎を築き、駿府城で亡くなった徳川家康をまつる国宝・久能山東照宮(静岡市)には隠れた人気スポットがある。
樹齢4百年を超える大クスノキであり、賽銭箱が置かれている。家康の亡くなった直後に植えられたクスノキはいまや「金の生る木」と崇められる。
当時、「世界一の金融資産王」だった家康のお金持ちパワーを信じて、ご利益にあやかろうと多くの人が手を合わせている。
家康は当時としては長命な75歳の人生をまっとうしたが、亡くなるときには、時価総額1兆円を超える個人資産を残した。
天下を取り、どんな大金持ちになっても、お金を持って、あの世へは行けない。
アメリカでは、「金の生る木」ではなく、「トランプタワー」が有名である。
米大統領選では、卑劣なテロの銃弾から間一髪で逃れ、タフな姿を見せた前大統領ドナルド・トランプの優勢が伝えられる。
「トランプタワー」に象徴されるように78歳のトランプも言わずと知れた大金持ちである。ただ、どんなにお金を稼いでも、死んでしまえば1ドルのお金さえ使うことはできない。
本当に死ななくてよかった。
そんなアメリカでよく読まれているのが、日本では2020年9月に翻訳、発刊された『DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)』 (ビル・パーキンス著、児島修訳、ダイヤモンド社)である。
簡単に言えば「金をすべて使い切ってあの世へ行け」である。
このタイトルを見るまでは、世界広しといえども貯蓄が何よりも好きで、お金をため込んでいるのは日本人だけだと思い込んでいた。
『DIE WITH ZERO』を読んでみると、お金を貯蓄に回してばかりいて、ほとんど使わないで亡くなっているのはアメリカ人も同じだとわかった。
ただアメリカでは、0・1%の富裕層とその他残り99・9%の格差が半端ではない。アメリカのトップ0・01%の平均所得は3000万ドル(48億円相当)を超える。
作者のビル・パーキンスはヘッジファンドマネージャーであり、少なくともトップ1%に入る大金持ちの側だろう。トランプもここに入る。
世界の個人金融資産の断トツはアメリカだが、ごく一部の億万長者が富を独占する社会である。
それが、日本との違いである。
日本人の個人金融資産を見れば、長い間、金利ゼロのデフレ時代が続いていたのに、ことし3月末には、「2199兆円」とケタ違いで、過去最高となった。
最近の株価の好影響もあってさらに個人金融資産は増え続けている。
国家予算をはるかに超える「2200兆円」となれば、富裕層の所有するべらぼうな資産だけでは足りない。数多くの日本人が多額の金融資産を抱え込んでいることがわかる。