医療費は無料? 保険は? バルセロナの病院事情

AI要約

スペインの公共医療制度の不便さと、プライベート保険の重要性について述べられている。

公共病院での検査や治療の遅さや不十分さ、プライベート保険での手軽さと質の高さについて詳細に説明されている。

日本の医療制度と比較した際のメリットやデメリットについても触れられている。

医療費は無料? 保険は? バルセロナの病院事情

ありがたいことに、私は昔から基本的に健康で大病をしたこともなければ入院すらしたことがありません。海外旅行に行くときも、初めの頃は海外旅行保険に入っていましたが、そのうち入らなくなりました。バルセロナにワーキングホリデーと学生ビザでいた年は、保険に入るのが義務だったので契約しましたが、結局一回も病院に行くことがなかったので使い方もよくわからないまま終了しました。

こんな感じでずっと病院に無関係に生きてきたわけですが、年のせいか、ここ数年ちょっと体に支障をきたす機会が増えました。そしてついに、バルセロナ7年目にして病院で痛い目に遭ったのです。

スペインに在住し、税金を納めている人は公共の病院を無料で使うことができます。カタルーニャ州ではCAPと呼ばれる病院が各エリアにあるので、自分が住民登録をしている地域のCAP(centro de atención primaria)に登録して、主治医を選ぶことになります(選ぶといっても、名前を羅列されて「誰がいい?」と聞かれるだけなので、一か八かです)。基本的には、原因不明で具合が悪くなったらまずその主治医とアポイントメントをとり、その主治医が専門家医にまわすかどうかを判断します。

「医療費が無料」というと、日本の方からは「いいですね!」といわれますが、実際のところ最悪です。

今回、4月末あたりに胃がすごく痛くなったので、「緊急」でCAPに突撃しました。というのも、電話で普通に予約をしようとすると、運が良ければ当日や翌日に診てもらえますが、1、2週間もかかることもあるからです。突撃したその日は、たまたま私の主治医の枠が空いていたので、当日に見てもらえることに。症状を説明して、簡単な触診をして数秒後に言われたのは「ウイルス性胃腸炎ですね」。

ということで、2週間ほど言われた通りの質素な食生活を送ったわけですが、よくならない。心配だからもう一度、緊急で押しかけてみる。するとその日は主治医がいなかったようで看護師にあたり、その食事制限を続けろと言われたので続けるも、さらに2週間経っても良くならない。

今度は電話で「緊急ではないけど、緊急だ」と言って、それまでの経過を説明したところ、その日に診てもらえることに。もう、この日は自分から検査をしてほしいと言いました。そこで、やっと検便をすることになりましたが(1ヵ月後にやっと!)、説明もほどほどに(これもひどかったのですが、書くとキリがないので書きません)、2週間後に電話をすると言われました。正直、そんなにかかるのかよと思いました。

そして3日後、何気なくCAPのマイページから自分がかつておこなった検査結果を見ていたら、なんと新しい報告書がアップされていたのです。見てみると、それは「2週間後に連絡する」と言われていたあの検査の結果。内容はバクテリアの有無を確認するものでしたが、何も見つからなかったというものでした。

そして2週間後、やっと医者から電話がかかってきて伝えられた内容は、「何も見つかりませんでした」。そんなこと2週間前から知ってます。何かほかの検査にもまわしていて、そちらに時間がかかっているのではと、密かに期待していた私はバカでした。なんのための2週間……それに体調は100%回復したとは言い切れず、グーグルで検索すると行き着くのは大病ばかり。募る不安と苛立ち。ネットで調べても意味がないとはわかりつつ、やめられない。パートナーからは「グーグルで調べたら、がんとしか出てこないんだからやめなさい」と言われる始末。

こんなにちんたらされていては治るものも治らなくなると思い、もう一度医者に、大袈裟に体調不良を訴えると、ようやく、胃カメラ・大腸カメラをやってくれることになったのです。が、地元のCAPには機材がないので、ほかの大きな総合病院に申請を出して、待たなくてはいけません。結局、検査をしてもらえたのはさらに4週間後でした。胃の痛みを訴え続けてトータル2ヵ月弱。そんなことありますか? 

幸いなことに何も見つからなかったので一安心でしたが、この結果を医者から説明してもらうために、また予約を取らなくてはいけません。たいした説明をしてくれないにもかかわらず。

以前、日本でも胃が痛くなり胃カメラをしてもらったことがありますが、初診から2週間以内にはすべて完結していたと思います。具合が悪くなったときに、すぐに診てくれるクリニックがあり、そこで対応しきれない場合は総合病院を紹介してくれる。そしてなにより、お医者さんがあらゆる可能性を考えて、念のためにでも検査を提案してくれる。しかも、結果が出るのも早い。さらに、丁寧にそれを説明してくれる。

3割負担しているんだから、という声もあるかもしれませんが、原因不明で不安に苛まれ続け、具合も良くならないまま放置されるくらいなら、私は3割負担のほうが遥かにいい。そもそも、バルセロナでは病院での窓口での支払いがないだけで、毎月高い社会保険料は払っているわけですから、厳密にいえば「無料」ではありません。

スペインだけでなく、ほかのヨーロッパの国でも医療制度はよくないと聞いていましたが、今回いかに日本の医療制度が恵まれているかを痛感しました。そしてもう二度と公共の病院には行きたくないので、この間にプライベート保険で「AXA」に入りました。社会保険とプライベートとダブルで払うのは悔しいですが、健康は何にも変え難いので仕方ない。

年齢や病歴によって値段は変わりますが、私の場合は年に500ユーロくらいです。「Copago」というプランで、AXAと提携している病院へ行った場合、基本的に毎回10~20ユーロくらい負担になりますが、AXAが運営しているcentro medico(病院センターとでもいのうでしょうか)に行けば、問診だけでなく検査(血液検査やエコー、6ヵ月経てば胃カメラや大腸カメラ、さらに手術も)が追加費用なしで受けられます。

さっそく先日プライベート保険を使ってAXAの病院センターを利用しましたが、受付の人からして感じがいい。そしてお医者さんも信じられなくらい(たぶん、日本では普通)親身になって聞いてくれる。それになにより、予約が普通に取れる。

スペインでも地域によって病院状況は違うそうなので一概には言えませんが、カタルーニャ住むことを考えている人には、プライベート保険に入ることを心よりお勧めします。