日本が誇る「六甲山の名水」に惚れ込んだ醸造家がつくる、ライトな味わいのクラフトビール[FRaU]

AI要約

神戸のまちは六甲山に囲まれ、豊かな水と風土が育むビールづくりのストーリーを紹介。

布引の水で作られるビールは、水と共に育つ地元の農家の野菜や果物も活用しシーズナルな味わいを楽しむ。

循環型のビールづくりを目指し、醸造後のカスも再利用するサーキュラーエコノミーに取り組むIN THA DOOR BREWING。

日本が誇る「六甲山の名水」に惚れ込んだ醸造家がつくる、ライトな味わいのクラフトビール[FRaU]

六甲の山に抱かれるように広がる神戸のまち。山は野菜の育つ土壌を育み、豊富な水を与え、その水はまちを潤し、酒づくりにひと役買いながらやがて海へとたどり着きます。その過程のなかで出会った、この土地のさまざまな風土がつなぐ人びとの話をご紹介します。

神戸のまちの背後にそびえる六甲山は、日本が誇る名水を育むことで知られている。幾重にも堆積する花崗岩層に濾過されて、国内屈指のカルシウム含有量をもつ天然水「布引の水」。するすると喉を滑るようなまろやかな飲み口は、神戸に寄港する外国船の乗組員にも称賛された。

そんな布引の水に惚れ込んで、神戸でしかつくれないビールをめざした醸造家がいる。それが、〈IN THA DOOR BREWING〉の中戸正親さんだ。定番銘柄5種類のうち、記念すべき完成第1号が「ファンクエール」。ホップの苦みよりもモルトの甘みや香りを前面に打ち出したイングリッシュペールエールである。さっぱりと軽やかな後味で、つい無意識にグラスを口に運んでしまう。

「醸造家によっては水のpH値を操作する人もいますが、私たちのビールは水に寄り添ったもの。布引の水だからこそのライトな味わいです」

前述の小泉さんの呼びかけでファーマーズマーケットに参加した中戸さんは思いがけない出会いをする。それは、神戸という土地柄に愛着をもち、丹精込めて野菜や果物を育てる地元の農家たち。彼らと交流するうちに、いちじく、ぶどう、ラ・フランスなど、彼らの手がける農産物を積極的に取り入れたシーズナルなビールも手がけるようになっていた。

「専門用語をきちんと理解して農家さんと話せるように、苦手な虫をガマンして有機農業の研修に1年間通ったんですよ」と胸を張る中戸さん。ビールを醸造した後に出る大量の麦芽カスは、サーキュラーエコノミーをめざしてパン種やグラノーラ、鶏の飼料などにリユース。山から受けた恵みを、再び大地へ還す循環型のビールづくりがはじまっている。

IN THA DOOR BREWING

神戸市東灘区向洋町中5-15 マーケットシーン301A