「日本で一番動物に優しい街に」 獣医師が導く動物と人の共生プロジェクト

AI要約

動物福祉を目指し、縁をつなぐNPO法人「しっぽのごえん」が熊取町で活動。獣医師ら17人のメンバーが保護犬猫の譲渡や子ども向け絵本読み聞かせを行う。

子どもたちによる犬への絵本読み聞かせやドッグダンス教室など、動物と人が心豊かになる活動を展開。熊取町での3年間の活動や地域イベントも紹介。

獣医師らは安全を重視し、高齢犬向けのドッグダンス教室など犬の生活質の改善にも取り組んでいる。

「日本で一番動物に優しい街に」 獣医師が導く動物と人の共生プロジェクト

 動物と人のご縁をつなぎ、幸せな社会をつくることを目的に、2020年1月に設立されたNPO法人しっぽのごえん。代表は大阪府泉南郡熊取町のVCAJapan泉南動物病院の横井愼一院長で、獣医師を含めた17人のメンバーが在籍し、保護犬猫の譲渡会や子どもたちによる犬への絵本の読み聞かせをする会、ペット介護相談会を開催するなど、動物福祉にかかわる活動をしている。なぜ獣医師が動物と人に関する活動を始めたのか。同法人の理事で獣医師の今井泉さんに、活動の背景を伺った。

「私たち獣医師は日々さまざまな動物やご家族と接しますが、『動物と人のための社会貢献活動をしたい』という話が代表の横井からあり、『熊取町を日本で一番動物に優しい街にする』をスローガンに団体を立ち上げました。もともと私自身は子どもたちに向けた動物に関する啓発活動は経験があり、NPO法人を立ち上げて1年ほど続けていたときに、熊取町の補助制度のお話をいただきました。そこから熊取町住民提案協働事業『人とペットに優しい街、くまとり』として、熊取町内でも活動を3年間行っています」

 しっぽのごえんの活動は、動物と人が心豊かになることを重視している。そのうちの一つに、「しっぽの仲間えほんの会」という、子どもたちが犬に絵本を読み聞かせるユニークな取り組みもある。

「アメリカの『R.E.A.Dプログラム』に興味を持ったことをきっかけに、町の図書館と協働し、地域の子どもたちに向けて始めました。しっぽの仲間えほんの会には、性格が穏やかで飼い主さんの指示をきちんと守れる犬が参加します。犬たちは子どもたちに優しくなでられたり、屋外で過ごせたりして、ふれあいの時間そのものを楽しんでいるように感じますね」

 毎年5月には、地域と協働で屋外イベント「くまとりワンFESTA」を開催。ドッグアジリティやドッグダンス、ペット防災の啓発など、動物とのふれあいの場を提供した。

「イベントに動物が集団で参加する際、私たち獣医師が医療面の監修ができるので、動物たちの心身の健康に配慮した運営をできることが利点。しっぽの仲間えほんの会では、必ず、『いぬとなかよくなろう』というレクチャーの時間を設け、子どもたちに犬とのあいさつの方法や犬がいやがることを伝えています。動物も人も安心で安全な運営を常に目指しています」

 また、獣医師が立ち上げた法人だけあり、犬の生活の質の改善維持を意識した活動もある。ドッグダンスのトレーナーと愛玩動物看護師の連携による「身体のためのドッグダンス教室」はその一つ。

「加齢に伴い関節などの動きが悪くなっていく高齢犬に対して、ドッグダンスをボディーバランスの強化目的に実施し、前後にはボディーバランスのチェックやクールダウンのマッサージも取り入れたプログラムを行ってみては?というアイデアから、この取り組みが始まりました。楽しむだけではなく、体の状態に応じて振り付けを決め、歩き方のくせなどを矯正してあげることが目的です。飼い主さんとわんちゃんがアイコンタクトを取りながら『バックして』などの合図をする様子を見ていると、動物と人との絆が深まるスポーツなんだと感動しますね」

 ドッグダンスは大会もあり、特別審査員を務めている今井さんは、エンターテインメントとしてだけでなく、動物の安全や福祉を重視した加点方式にもひかれていると言う。