「死ぬ前に飲む水ぐらいあげられないのか...」食肉処理場で動物愛護法に明記の「給水」を所管の厚労省が《高額な改修費用を言い訳》に「やる気なし」

AI要約

肉料理が好きな人が多い中、食肉処理場で水が飲めない状況にある牛や豚が多く存在している。

国内の食肉処理場の多くがアニマルウェルフェアの規定に従わず、水飲み設備が不十分であるため、長時間水を飲めない状況が続いている。

アニマルライツセンターが全国の処理場に対して調査を実施し、牛と豚の飲水設備の状況を明らかにした。

「死ぬ前に飲む水ぐらいあげられないのか...」食肉処理場で動物愛護法に明記の「給水」を所管の厚労省が《高額な改修費用を言い訳》に「やる気なし」

ステーキやしゃぶしゃぶ、ハンバーグ......。

肉料理が好きな人は多いが、その命をいただいている牛や豚の多くが食肉処理場で水が飲めない状況に置かれていることをご存じだろうか。

欧米などに食肉を輸出するには、アニマルウェルフェア(動物福祉、AW)の観点から「動物たちが水が自由に飲めること」が条件になっているが、国内用には義務付けられていないため、飲水設備が設置済みの施設は「牛の6割、豚の3割」にとどまっている。動物は処理前日に搬入されることも多く、輸送時間も含め長時間水が飲めないことはめずらしくない。なぜこんなことになっているのだろうか。

※肩書きは取材当時のもの

処理場の飲水設備の有無についての国の調査はない。そこで、畜産動物の問題に取り組むNPO法人アニマルライツセンター(ARC、東京都渋谷区)は2023年5~7月、文書と電話で全国の民間・公設(第3セクター含む)処理場に豚と牛の飲水設備に関してアンケート調査を実施した。

それによると、計119の牛の解体場のうち、飲水設備が「あり」「設置予定」は計65.5%(少数点2位以下は四捨五入)で、「なし」「不明・無回答」は計34.5%だった。豚(134施設)は、「あり」「設置予定」が計36.6%にとどまった。

さらに、牛と豚両方を扱う63施設について、「牛も豚も水が飲める」「両方が飲める設備を設置予定」は計29ヵ所、「両方水は飲めない」は11ヵ所。また「牛は飲めるが豚は飲めない」は23ヵ所あり、牛と豚で扱いに差が見られた。

処理されるまでの最大係留時間は、8時間以上が牛72ヵ所、豚74ヵ所に上った。

岡田千尋ARC代表理事は「午前中の処理だと前日に運ばれることが多く、特に牛は長距離輸送が多い。直射日光が当たる場所での係留もある。夏の間は輸送中の豚があえぐように息をしたり、口から泡を噴いたりしていることもあります」と説明する。