名門・県立浦和高校にも「男女共学」を求める声が…当事者からは反対意見多数「選択の幅が狭められることになる」

AI要約

埼玉県で男女別学の県立高校の存続について再び議論が巻き起こっている。過去の議論でも別学維持が決定されたが、現在も各校で別学維持の意見が強い。

男女別学校の一つである埼玉県立浦和高校の同窓会代表理事は、別学校の継続が経済的にも選択の幅を広げていると主張している。浦和高は実績豊富な公立高校である。

戦後に男女共学が推進され、東北地方を含め多くの公立高校が共学化したが、埼玉県や群馬県、栃木県では男女別学が残っており、再度の共学化勧告があったが別学維持の結論が出された。

名門・県立浦和高校にも「男女共学」を求める声が…当事者からは反対意見多数「選択の幅が狭められることになる」

 男女別学の県立高校を12校抱える埼玉県で、その是非についての議論が再び頭をもたげている。22年前にも同様の議論があったが、その際は別学維持の結論が出された。今回の議論でも、ジェンダー平等も進展する中で、なお男女別学の県立高は各校とも別学維持の意見が過半数から大勢を占める状況にある。なぜこの時代に別学維持なのか。

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「公立校で別学をなくせば、男女別学を志望する人は私立に行かざるを得ない。経済的に厳しい人にとっては選択の幅が狭められることにもなりますよね」

 こう指摘するのは、「一般社団法人 埼玉県立浦和高等学校同窓会」の代表理事で会長の野辺博さん。県立浦和高は同県下でもトップの公立高で、東京大学合格者数でも公立高としては全国トップクラスの実績を誇る。

 野辺さんは自身の高校生時代から「自由な校風であり、先生もある意味、自由というか、個性のある先生が多かった」とし、10キロメートルを走る新入生歓迎マラソンや秋に行われる茨城県古河市までの50キロメートル強歩、夏の臨海学校など「勉学だけでなく、運動が苦手な者もそうした行事で心身ともに鍛えられた。まさに全人教育がなされていた高校だった」と振り返る。

 埼玉県内では「頭のいい子なら男子は浦高、女子は一女」という言葉が一般にもよく聞かれる。その言葉は、普通にそう言われるほど、両校の抜きんでた実力が物語られていると同時に、男女別学が埼玉県では普通のこととして捉えられてきた証ともいえそうだ。

 そもそも、男女共学は戦後、連合国軍総司令部(GHQ)により推進され、西日本から多くの公立校が男女共学になっていったとされる。

 00年代前後には福島県や宮城県など、東北地方でも公立高の共学化が進み、今や全国の男女別学公立高の7割が埼玉県のほか、群馬県、栃木県に集中して残っている。埼玉県では02年、今回と同様に男女共学化に関する勧告が出されたことがあるが、このときは別学維持の結論が出て終わった。

 今回の一連の議論は昨年、県民からの「埼玉県立の男子高が女子の入学を拒むのは国連の女子差別撤廃条約に違反」などとする苦情が発端。実際は同条約違反ではないにもかかわらず、8月に同県の男女共同参画苦情処理委員は「共学化が早期に実現されるべき」との勧告書を発出した。このことについて県教委は、1年以内に対応策を示すよう求められている。

 これに対し、浦和高は早々に昨年12月、「埼玉県立高校における男女別学は今後も維持されていくべき」との意見書を大野元裕知事、県教委の日吉亨委員長宛に提出。同月から有志が「共学化反対の署名サイト」を立ち上げた。