増え続けるシニア労災 加齢や持病もハードルに 高齢者に厳しい会社は若者も働きにくい これから 100歳時代の歩き方

AI要約

高齢者の労働災害が深刻化しており、労働災害の申請や認定のハードルが高い状況が続いている。

高齢者の労働力に期待する職場では安全対策が急がれており、労災が増加している実態が示されている。

高齢者の労働者は、報告や申請に躊躇する傾向があり、認定率も低い状況が続いている。

増え続けるシニア労災 加齢や持病もハードルに 高齢者に厳しい会社は若者も働きにくい これから 100歳時代の歩き方

働く高齢者の労働災害が深刻になっている。高齢者の労災が多くなる一方、労災の申請や認定のハードルが高い面があるのだ。高齢者の労働力に期待する職場では、さまざまな工夫で安全と健康を守ろうとしている。シニア就労が広がりを見せる中、すべての職場で安全対策が急がれる。

今年5月、派遣社員の70代男性が通勤時に駅で転倒、頭を打って救急搬送された。現在もリハビリ中で、派遣会社は労働基準監督署に労災を申請した。

高齢者の労働災害が増えている。厚生労働省が発表した令和5年の「高年齢労働者の労働災害発生状況」によると、60歳以上の高齢者の割合は、雇用者全体のうち18.7%だが、労働災害による休業4日以上の死傷者数のうちでは29.3%を占め、割合自体も増え続けている。

労働者は正規、非正規の別なく、業務上や通勤で起きた病気やけが(労働災害)に対し、労災保険の補償を受けられる。会社は労災保険への加入が義務付けられている。給付には、労働者が会社に報告後、本人か会社が労基署に申請・請求し、労基署の調査を経て、認定を受ける必要がある。

東京労働安全衛生センターの飯田勝泰事務局長によると、高齢者は周囲や自身への影響を考えて、会社への報告を躊躇(ちゅうちょ)する傾向があるという。冒頭の事故では会社が労災申請に協力的だったが、「会社が協力的でなかったり、手続きが煩雑だったりで申請をあきらめる人も少なくない」と指摘する。

高齢者は労災認定率も低い。5年度の厚労省の「過労死等の労災補償状況」によると、脳・心臓疾患では全体の認定率が32.1%なのに対し、60歳以上は23.1%だった。飯田事務局長は「高齢者は持病や加齢があるため、病気やけがが業務に起因すると証明するのが難しい」と説明する。

このような状況でも「認定の余地はある」と、労災などに取り組む、ひらの亀戸ひまわり診療所(東京都江東区)の毛利一平所長は言う。「持病があっても、業務によって悪化した場合は業務上疾病として扱われる。あきらめずに、労災が起きたときは手続きをしてほしい」と訴える。(本江希望)

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