塩分の摂取タイミングと熱中症の関連性…夏場の補給は実は逆効果?【役に立つオモシロ医学論文】

AI要約

屋外で働く方にとって、熱中症の予防には健康管理だけでなく、業務環境の改善や塩分の補給が重要。

福島県の消防士を対象にした研究では、塩分摂取のタイミングが熱中症の発症リスクに影響があることが示唆された。

塩分の適切な摂取量とタイミングに関する今後の研究が必要とされている。

塩分の摂取タイミングと熱中症の関連性…夏場の補給は実は逆効果?【役に立つオモシロ医学論文】

【役に立つオモシロ医学論文】

 屋外で働く方にとって、熱中症は深刻な労働災害のひとつです。熱中症の予防には、健康管理だけでなく、業務環境の改善が不可欠でしょう。また、高温環境では大量の汗とともに塩分(主にナトリウム)も失われるため、水分以外に塩分の補給も重要です。

 一方で、塩分の適切な摂取タイミングについては、信頼性の高いデータが限られていました。そのような中、熱中症の予防に対する塩分摂取の関連性を検討した研究論文が、「プロスワン」という科学誌に2024年1月2日付で掲載されました。

 この研究では、福島県の消防署に勤務する健康な消防士28人(平均31歳)が対象となりました。研究参加者に対して、夏季(21年7月1日~8月31日)に行われた屋外訓練の前後でアンケート調査が実施されています。

 訓練前のアンケートでは睡眠や飲酒の状況、訓練後のアンケートでは水分の摂取量、塩分の摂取タイミング(訓練前、訓練中、訓練後、摂取なし)、熱中症の症状などが調査され、熱中症の発症リスクを高める要因が統計的に解析されました。

 調査の結果、研究参加者の11.2%で熱中症の症状を認めました。統計解析をしたところ、熱中症の発症リスクは、訓練前に塩分摂取をした消防士で約6倍、訓練前と訓練中の両方で塩分を摂取した消防士では約23倍、統計学的にも有意な増加を認めました。一方、食事から摂取した塩分量と熱中症の発症リスクに、統計学的に有意な関連性は認めませんでした。

 論文著者らは「熱中症の発症リスクは、塩分の摂取タイミングが不適切な場合では、むしろ増加する可能性がある。塩分の適切な摂取量とタイミングについて、今後の研究で明らかにしていく必要がある」と結論しています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)