児童相談所から長女を奪い返した両親に有罪判決…実の子供でも“連れ去り”は犯罪行為【「表と裏」の法律知識】

AI要約

30代の父親と母親が未成年者略取などの罪で起訴された事件について。

両親が実の娘を一時保護から奪い返したことが犯罪となる理由について。

子供を保護者の同意なく連れ去る行為は未成年者略取または誘拐罪に該当し、特に悪質な場合には刑事的に処罰される可能性がある。

児童相談所から長女を奪い返した両親に有罪判決…実の子供でも“連れ去り”は犯罪行為【「表と裏」の法律知識】

【「表と裏」の法律知識】#240

 児童相談所に一時保護された長女を奪い返したとして、未成年者略取などの罪に問われた30代の父親と母親に対する公判が6月14日にありました。公判では、検察側は「悪質性が高く一時保護の実行性が阻害される」とし、父親に懲役2年、母親に懲役1年6月を求刑し結審した。弁護側は執行猶予を求めました。

 被告人質問で父親は、長女に帰ってきてほしいという気持ちを優先した、奪い返す行為は合法だと信じ込んでしまったと述べています。

 両親が実の娘を家に連れて帰ったことが、なぜ犯罪になるのか、少し違和感を覚えたかと思います。

 未成年者略取という言葉はあまり聞き馴染みがないでしょうが、子供やその保護者などの意思に反して暴行や脅迫を用いて子供を支配下に置く行為をいいます。

 児童相談所が行う一時保護では、いったんは児童相談所が保護者的な立ち位置になるため、児童相談所の意思に反して子供を連れ去るような行為は、たとえそれが実の両親が行ったものであったとしても、保護者などの意思に反して子供を自身の支配下に置く行為になるため、未成年者略取罪に該当することになるのです。

 今回の事件では、両親に子供への虐待の疑いがあり、子供を守るためにいったん両親から児童相談所が子供を一時保護していた中での連れ去り行為であるので、特に悪質なものであると考えられます。

 このことは、離婚や別居後の両親にも当てはまります。離婚の際に、その保護者の同意を得ずに子供を連れ去った場合には、たとえ実の親だとしても、保護者などの意思に反して子供を支配下に置く行為となるため、未成年者略取または誘拐罪に該当しうるのです。とくに子供の生活状況をまったく考えなかったり、虐待の疑いがある親による連れ去り行為については、悪質と判断され、刑事的に処罰される可能性があります。

 自分の子供だからといって、身勝手に扱うことは許されません。ぜひ知っておいてください。

(髙橋裕樹/弁護士)