「カルシウム」不足で起こる、「骨粗しょう症」だけでは済まない「恐ろしい事態」

AI要約

日本人の病気予防法について解説。体質の違いによる病気のなりやすさや発症の仕方、カルシウムと動脈硬化の関連性、ビタミンDの重要性などが紹介されている。

日本人の伝統的な食事からのカルシウム摂取とビタミンDについて。魚や海藻、小魚などを通じて十分な栄養を摂取していることが強調されている。

日本人と米国人とのカルシウム摂取の違い、ビタミンD補給方法の比較について。自然な食物からの栄養摂取の重要性が強調されている。

「カルシウム」不足で起こる、「骨粗しょう症」だけでは済まない「恐ろしい事態」

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日本人には、日本人のための病気予防法がある!  同じ人間でも外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がなく、むしろ逆効果ということさえあるのです。見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための方法を徹底解説! 

*本記事は『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(講談社ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

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 さて、動脈硬化は骨粗鬆症と密接に関係するらしいことがわかってきました。日本の骨粗鬆症患者は1000万人を超え、女性に多いものの、5人に1人は男性なので、男性も他人ごとではありません。この骨粗鬆症が血管の病気である動脈硬化と関係する背景には、カルシウムがさまざまな生命活動において重要な役割を果たしていることがあります。

 体内でカルシウムが不足すると、脳の指令で骨からカルシウムが血液の中に溶けだして、カルシウムを必要とする組織に運ばれます。このときあまったカルシウムが動脈の壁にしみこんで、石灰化を起こすと考えられているのです。

 図5─10に模式図を示しました。この仕組みは、まだわかっていないことが多いものの、骨粗鬆症と血管の石灰化の両方に同じ蛋白質がかかわっていることが実験で確かめられています。カルシウムをしっかり摂取すれば骨粗鬆症を予防できるだけでなく、動脈硬化の進行をおさえられる可能性があるということです。

 日本人は伝統的に海藻や緑黄色野菜、大豆、小魚などからカルシウムを取ってきました。強い骨を作るにはカルシウムの他にも必要な成分があります。その一つ、ビタミンDには、カルシウムの吸収を促し、骨を新しく生まれ変わらせる働きがあります。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の大部分がビタミンDを十分摂取できていますが、2001年には1日8・4㎍摂取していたのが、2015年には7・5㎍と、約10%少なくなりました。これは、日本人がビタミンDの約9割を魚から摂取しているのと無縁ではないでしょう。

 これとは対照的に、米国人はカルシウムの大部分を牛乳から取っています。ビタミンDは牛乳に人工的に添加されていて、それでも足りない分はサプリメントでおぎなっているのが実情です。国によって考え方はさまざまですが、自然の食物から摂取できれば、それに越したことはありません。日本人は、魚の摂取をもう少しだけ増やすことで、EPAとDHAに加えて、カルシウムとビタミンDの摂取量も増えて、もっと動脈硬化に強くなれます。

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