ロシアでコロナ感染「マイナスの経験を宝に」 バレリーナ石井久美子さん、病乗り越えた今

AI要約

マリインスキー・バレエ団の日本人初のメンバーである石井久美子さんが新型コロナウイルスに感染し、線維筋痛症に苦しむ後遺症を抱えながらも前向きに生きる姿を送る。

日本人としての責任を感じ、努力を続けた石井さんがコロナ禍による困難を経験し、バレエダンサーとして復帰するまでの試練を乗り越えていく過程が描かれる。

石井さんのバレエへの愛情と前向きな姿勢が、バレエ学校の主宰と著書出版を通じて示され、将来への希望と繋がる可能性が示唆される。

ロシアでコロナ感染「マイナスの経験を宝に」 バレリーナ石井久美子さん、病乗り越えた今

200年を超える歴史を誇り、チャイコフスキー「眠れる森の美女」などの古典を初演したことでも知られるマリインスキー・バレエ団。そのロシア最高峰のバレエ団に日本人として初めて迎えられた石井久美子さん(29)は4年前、新型コロナウイルスに感染した。療養のため帰国した後は、後遺症の線維筋痛症に苦しめられた。「バレエダンサーに復帰するにはまだ時間が必要」というが「マイナスの経験こそ私の宝だと思っています」と振り返る。今はバレエ学校を主宰しながら、著書も出版。バレエへの変わらぬ愛とともに前を向く。

■「日本人初」の責任

身長169センチで手足が長く、ロシア人ダンサーと並んでも遜色がないスタイルを誇る石井さん。17歳でロシアにバレエ留学し、2年後の2013年、マリインスキー・バレエ団に日本人として初めて正式入団した。近年まで外国人に門戸を開かなかった名門だが、石井さんは1年目からソロで踊る機会にも恵まれた。

「私よりきれいなロシア人は、いくらでもいる。そしてここでは、ロシア人も悲鳴を上げながら踊っている。その中で私を選んでくれた。期待に応えよう、『日本人初』の責任を果たそう、と誰よりも努力しました」

過酷なレッスンで極度の貧血に悩まされながらも、バレエの本場で日本人の個性をどう生かし、弱点を克服できるか試行錯誤を重ねた。しかし20年に入り、新型コロナウイルスが蔓延し始めた。

■ガラスが刺さるような痛み

旧都サンクトペテルブルクにある本拠地、マリインスキー劇場は20年3月に閉鎖された。アジア人であることを理由に、身の危険を感じる出来事にも遭遇した。「街中で『お前、コロナだろう』といわれ、雪玉を投げられた。突き飛ばされたこともありました」

母国に戻る外国人ダンサーが増え、石井さんも後輩の永久メイさんと3月下旬に一時帰国。半年後にはロシアに戻ったが、年末、コロナ感染が判明した。

「病院はきちんと対応してくれましたが、熱が下がっても全身にガラスが刺さるような痛みが続き、『私、死ぬかも』と本気で思いました」