大学生で10億円の価値も!商業化進む米国の大学スポーツ、市場規模は8000億円…日本からアスリート流出の懸念

AI要約

米国の大学スポーツ界がアマチュアリズムから商業化への転換を遂げており、学生選手への報酬制限が緩和されつつある。

学生個人の肖像権を巡る訴訟が相次ぎ、全米大学体育協会(NCAA)も商業利用容認に舵を切った状況が続いている。

市場規模も巨大で、NCAAはプロスポーツと肩を並べるビジネスを展開。留学生の将来に影響を及ぼす可能性もある。

 長らくアマチュアリズムにこだわってきた米国の大学スポーツ界が商業化に舵を切っている。

 米プロスポーツと肩を並べる市場規模がありながら、選手への還元が制限されてきたことに学生側が反発し、方針転換が進む。

 日本の高校生で優れたアスリートが米大で高額報酬を得られる可能性に引き寄せられ、人材が流出する懸念もある。(JBpress)

 (田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 学生のアマチュアリズムを堅持してきた米国の大学スポーツ界が、人気アスリートの肖像権などを巡って大きな変革を迎えている。

 学生個人の持つName(名前)、Image(画像・映像)、Likeness(肖像権)の頭文字を組み合わせた「NIL」について、学生側が商業利用を求める訴訟が相次いでいるのだ。これを受けて、全米大学体育協会(NCAA)が商業利用を容認するだけでなく、放映権料の学生アスリートへの分配にも舵を切る事態となってきた。

 スター選手は場合によっては、プロ以上の金銭を受け取ることが可能となり、学生とプロの「垣根」にも変化が生じる事態とみる向きもある。日本から留学して活躍する選手への影響も大きくなる可能性がある。

 現状では留学生はビザの関係で就労が制限され、NILの対価を受け取る対象外となっている。だが、米西海岸の名門、スタンフォード大でアメリカンフットボールのコーチを務める河田剛氏は、NILの商業利用が留学生にも容認される動きが広がる可能性は否定できないと指摘する。

 そうなった場合には、日本からの留学生もNILを活用したメリットを享受できるようになり、米国への人材流出につながる転換期となる可能性もある。

■ 市場規模は日本のプロ野球の4倍以上

 大学スポーツ組織としては世界最大規模の全米大学体育協会(NCAA)は、全米の大学の約半数の1200校が加盟し、年間1000億円の収入を得ている(現在の為替レートではさらに上振れしている)。

 市場規模も年間約8000億円程度あり、MLB、NBA、NHL、NFLの4大プロスポーツに肩を並べ、日本のプロ野球の市場規模が1800億円程度と考えると、NCAAがいかに巨大なスポーツビジネスを展開しているかが想像できる。

 そんなNCAAの収入源の大きな柱が放映権料だ。NCAAは米国で人気のアメリカンフットボールとバスケットボールを中心に、野球やテニス、陸上、サッカー、アイスホッケーなど各種競技の大会を運営。大会を中継するテレビ局との契約で莫大な放映権料を手にする。

 毎日新聞の報道によれば、男子学生バスケの放映権料は年間11億ドル(約1700億円)に上る。他メディアでも、アメフトなども同様に長期の大型契約が締結されていることが報じられる。