「宇宙での暮らし」を改善する日用品を地上で販売–マウスウォッシュタブレットや温感ボディシート

AI要約

宇宙生活の課題をもとに、宇宙と地上双方の暮らしの改善をはかるビジネス共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」(以下「TSL」)から新たに生まれた2つの製品が地上で販売を開始した。

マウスウォッシュタブレットと温感ボディシートの特徴や開発経緯、販売開始に伴う展望などが示されている。

それぞれの製品がどのように宇宙での生活やストレス緩和に寄与するかが詳細に説明されている。

「宇宙での暮らし」を改善する日用品を地上で販売–マウスウォッシュタブレットや温感ボディシート

宇宙生活の課題をもとに、宇宙と地上双方の暮らしの改善をはかるビジネス共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」(以下「TSL」)。このTSLから新たに生まれた2つの製品が、地上での販売を開始した。噛むだけで口腔ケアができる「マウスウォッシュタブレット」、拭くと温泉のように身体が温まる「温感ボディシート」だ。

 9月10日には「『THINK SPACE LIFE』地上実装記念トークイベント」が開かれ、両製品の関係者らによって開発のこだわりなどが語られた。なお、どちらの製品も開発にあたっては、日本たばこ産業(JT)のR&Dチーム「D-LAB」が伴走している。

THINK SPACE LIFEから20製品が「宇宙」へ

 TSLは、JAXAの新事業創出プログラムである「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の一環で、2020年7月に立ち上げられた。「宇宙での生活の質(QOL)の向上」という新領域に対して、これまで200以上の企業や団体がオープンイノベーション方式で取り組んできたという。2024年からはTSLの運営が特定非営利活動法人ミラツクに移行され、民間主導での新体制を開始していた。

 TSLからはこれまでにも、宇宙船内活動用の靴下「アストロソックス」(ワコール)、物の紛失を防ぐ粘着シート「Fixpace」(久光製薬)、水を使わずに衣類を清浄できるシート「Space Laundry Sheet」(花王)などが誕生。2024年3月時点で、20の製品が国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士に利用され、7つの製品はすでに地上でも販売されていた。

噛むだけで爽やかマウスウォッシュタブレット「チュピカ」

 新たに販売された1つ目の製品が、愛知県のTSUYOMIが開発したマウスウォッシュタブレット「Chupica(チュピカ)」。タブレット1粒を10秒ほど噛み砕いた後に、泡を口内に馴染ませ、あとは吐き出すか少量の水で口をすすぐだけで口内を清潔にできる。茶葉エキスやシソ種子エキスなど18種類の植物由来成分が配合されているという。

 宇宙においては、1リットルの水を輸送するだけで数百万円のコストがかかる。そのため、歯磨きなどで使用できる水の量も制限がある。そこで同社では、宇宙から四季を感じるタブレット型ハミガキ&マウスウオッシュ「mouthpace (マウスペース)」を開発。2022年、2023年とISS搭載の生活用品にも正式採用された。

 TSUYOMI代表取締役の森健一氏は「THINK SPACE LIFEに参加することで予想だにしなかった可能性が広がった」と振り返る。たとえば、ISSで宇宙飛行士がmouthpaceを使ったことがニュースによって広まり、OEM提供パートナーが増加したという。また、宇宙関連施設やイベント等の問い合わせも増えているとのこと。

 ISSでの宇宙実証を終えて、mouthpaceで培った技術を地上でも展開すべく、同社ではオーラルケアに関心の高い、18~25歳の約1000名に対してUXリサーチを実施。20種類を超える錠剤の試作品開発や、100案を越えるパッケージ開発、評価や改善を繰り返して、マウスウォッシュタブレット「チュピカ」を開発した。

 まずは9月10日より、先行販売として16万錠分を販売する。20粒版と2粒版を用意しており、TSUYOMIのECサイトをはじめとする各種ECサイトで購入できる。価格はオープン。今後は100万錠の生産体制を構築し、ホテルのアメニティや美容院、スーパーやドラッグストアなどでの展開を検討するほか、防災グッズとしての活用にも期待している。

身体を拭くだけでぽかぽか–温感ボディシート「湯るまる」

 2つ目の製品は、Le Furoが開発した温感ボディシート「湯るまる」。天然温泉水と温泉鉱石から数十種類のミネラルを抽出・凝縮した“クラフト温泉”を配合している。拭いた瞬間はさっぱりするが、その後はじんわりとぽかぽかしてくる。この状態が約20分ほど持続するという。

 同社では“温泉を持ち運ぶ”という発想で、これまでにも「温泉デュフューザー」「温泉除菌スプレー」などを開発してきた。TSLにおいては、宇宙でのストレス極限状態を緩和できる「宇宙×温泉」のプロダクトを検討。当初は美容マスクシートを開発していたそうだが、顔だけでは温泉感覚が得られないことから、“温感ボディシート”という競合のいない領域を選んだという。

 実際にさまざまなターゲットユーザーに使ってもらったところ、特に手応えを感じたのが航空機の客室乗務員(CA)だったという。ロングフライト中の短い休憩時間でもリフレッシュしながらストレス緩和ができると好評だったそうだ。また、防災の備蓄品としてもポジティブな評価を得られたと説明した。

 湯るまるも9月10日より一般販売を開始した。価格は1パック10枚入りで税別635円。Le FuroのECサイトのほか、麻布十番や鎌倉にある同社の温泉施設などで購入できる。また、小売店などの事業者向け商談も順次開始するという。