インターステラ、小型衛星ロケット「ZERO」用ターボポンプの熱走試験に成功

AI要約

小型人工衛星打ち上げ用ロケット「ZERO」のエンジン開発に成功したインターステラテクノロジズ。ターボポンプの熱走試験に成功し、一軸方式を採用したことで技術的難易度を乗り越えた。

ZEROは液化バイオメタンと液体酸素を推進剤とする液体ロケットで、前例のないガスジェネレータサイクルと再生冷却方式を採用。エンジンの単体試験を進め、今後は統合試験へと進む予定。

ZEROは100~200kg級の小型衛星を地球低軌道に打ち上げる能力を持ち、国内外の需要に応えるため能力増強を図っている。

インターステラ、小型衛星ロケット「ZERO」用ターボポンプの熱走試験に成功

小型人工衛星打ち上げ用ロケット「ZERO」を開発するインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は、ZEROのエンジン「COSMOS」用ターボポンプの熱走試験に成功した。サブスケールモデルでのターボポンプ開発はすべて完了したという。8月23日に発表した。

 ロケットの中で最も開発が難しい要素の一つとされるターボポンプで基幹ロケット開発企業以外では国内唯一、ターボポンプの技術を有する企業になったとしている。

 ターボポンプは燃焼器に燃料と酸化剤を送る心臓部であり、ZEROでは燃料ポンプと酸化剤ポンプを一体化させた「一軸方式」を採用している。

 一軸方式は、燃料と酸化剤、それぞれでポンプを分ける場合に比べて技術的難易度が高いとされる。しかし、一軸方式はエンジンシステム全体の小型化や軽量化、部品点数の削減での低コスト化につながるという。

 今回の熱走試験で使用したターボポンプはサブスケールモデル(長さ42cm、直径19cm)、材質は耐熱性に優れているというニッケル合金(一部にチタン合金とアルミ合金)を使用している。

 ターボポンプ開発の最終仕上と位置付けている熱走試験はタービン駆動に燃焼ガスを活用、ガス発生器(ガスジェネレーター、GG)と熱交換器(HEX)を組みあわせたシステム全体の性能を確かめるもので、今回の試験では目標の回転数で良好に動作していることを確認した。

 同社のターボポンプグループには、基幹ロケットでのターボポンプ開発やロケットシステム設計の経験者が複数いると説明。今回の熱走試験と並行して、すでにフライトに向けた開発モデルの設計を完了、現在は組立工程に入っており、今冬には開発モデルでの試験を計画している。

 ZEROエンジン向けターボポンプの設計は、基幹ロケット用エンジンの開発で豊富な経験と実績があるという室蘭工業大学との共同研究として2019年から開始した。2021年9月にはポンプ製造国内最大手の荏原製作所が加わり、3者での共同研究開発となって進められてきた。

 今回の熱走試験は、ロケットエンジンやターボポンプの試験実績が豊富というIHIエアロスペース(群馬県富岡市)が協力、同社の相生試験場(兵庫県相生市)で進めた。

 ZEROは推進剤として燃料に液化バイオメタン、酸化剤に液体酸素を使用する液体ロケット。ZEROのエンジンはガスジェネレータで発生させたガスの力でターボポンプを駆動し、タービンを高速回転させることで燃焼器に推進剤を高圧で送り込む「ガスジェネレータサイクル」をインターステラとして初めて採用、燃料を燃焼器を冷やすことにも活用する「再生冷却方式」も取り入れている。

 これまでにガスジェネレータ、燃焼器、ターボポンプそれぞれの単体試験を進めており、今後はそれらを組み合わせたエンジン統合試験へと進む予定。

 ZEROがターゲットとする小型衛星の重量は、100~200kg級がボリュームゾーンとなっている。昨今のトレンドを見据え、国内をはじめ海外の旺盛な需要も取り込んでいくため、搭載可能な衛星重量を地球低軌道(LEO)に最大800kgを打ち上げられるロケットに能力増強を図っている。国内の自立的な宇宙輸送サービス構築に貢献するとともに、アジアオセアニアや欧州市場でのポジションを確立していくことを狙っている。