DigitalBlastなど、宇宙での細胞培養実験の自動化で共同研究–「きぼう」搭載めざす

AI要約

デジタルブラスト(DigitalBlast、東京都千代田区)などは、遠隔自動細胞培養技術を活用した「Space Biology研究プラットフォーム」を構築し、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(JEM)「きぼう」への装置設置を目指した研究を開始した。8月1日に発表した。

 産業技術総合研究所(産総研)のグループ会社であるAIST Solutions(東京都港区)や金沢大学、東京電機大学、Laboko(さいたま市大宮区)と共同で研究する。

 現在、医学やライフサイエンスの領域では、臓器を構成する細胞を培養し、微細流体チップに配置して薬物などへの反応を見ることができる「臓器チップ」の技術が開発され、生体を用いずに人体に近い環境下で実験できる手段として注目されているという。

DigitalBlastなど、宇宙での細胞培養実験の自動化で共同研究–「きぼう」搭載めざす

デジタルブラスト(DigitalBlast、東京都千代田区)などは、遠隔自動細胞培養技術を活用した「Space Biology研究プラットフォーム」を構築し、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(JEM)「きぼう」への装置設置を目指した研究を開始した。8月1日に発表した。

 産業技術総合研究所(産総研)のグループ会社であるAIST Solutions(東京都港区)や金沢大学、東京電機大学、Laboko(さいたま市大宮区)と共同で研究する。

 現在、医学やライフサイエンスの領域では、臓器を構成する細胞を培養し、微細流体チップに配置して薬物などへの反応を見ることができる「臓器チップ」の技術が開発され、生体を用いずに人体に近い環境下で実験できる手段として注目されているという。

 きぼうへの細胞培養装置設置を検討しているDigitalBlastは、以前から遠隔自動細胞培養技術の開発を進めている金沢大学の木村寛之氏(疾患モデル総合研究センター教授)、東京電機大学の茂木克雄氏(工学部 電子システム工学科教授)、産総研の髙田尚樹氏(エネルギー・環境領域 省エネルギー研究部門 熱流体システムグループ長)、Labokoの小此木孝仁氏とともに3年後のISSでの実証開始を目指す。

 共同研究では、宇宙環境での生体への放射線影響を、ヒトを模した「臓器チップ(Organ-on-a-chip)」で評価できる実験装置の開発を目指す。

 具体的には、臓器チップや細胞、オルガノイドを培養、管理できる機構を備えるとともに、研究者が宇宙で行いたい実験を実現できる装置とするため、事前に地上で作業内容をコーディングして処理を自動化する、遠隔で操作できるといった仕組みを備える予定。

 装置に必要となる、自動化や遠隔操作、液滴制御、細胞培養といった要素技術については、すでに実用化のめどが立っていると説明。それらが宇宙の微小重力下で動作するかの検証には、きぼうでの実証が必要なことから2027年の実験開始を目指す。

 共同研究では、茂木氏が細胞培養実験のための流体デバイスを開発、小此木氏が流体操作技術を開発するとともに、プラスチックで精密射出成形し、木村氏が細胞培養実験でのデバイス評価、髙田氏がデバイス内部流動で数値で解析する。DigitalBlastは、きぼうでの利用を想定した細胞培養実験装置を検討する。

 開発された装置は、宇宙放射線の生体への影響を観察することが当面の目的。機能を拡張することでライフサイエンス系のさまざまな実験に使用できるSpace Biology研究プラットフォームとして発展させていくことを考えている。

 共同研究では、宇宙での実験プラットフォームの構築を目指すが、実験操作の自動化や遠隔操作などが可能な装置は、地上でのライフサイエンス系実験や創薬の省力化にも応用可能であり、実現できれば、バイオや製薬、医療産業にも大きなインパクトを与えうるものと説明する。

 現在、創薬や生化学研究の現場では人力での繰り返しの単純作業が多く、作業を自動化する装置は存在するが、非常に高額と解説。宇宙というリソースの限られる環境で運用できる装置が開発できれば、低価格かつシンプルなローエンドモデルに落とし込み、地上での創薬や生化学業務を効率化することも可能としている。

 装置への搭載を検討している遠隔操作や自動化の技術は、薬品合成の遠隔化や自動化にも応用でき、世界の医療供給体制の充実にも寄与できるという。