新型コロナ治療の免疫細胞作製 3年後に治験開始へ 京大など

AI要約

京都大や藤田医科大の研究チームが、ES細胞から新型コロナウイルスを検知して攻撃するキラーT細胞を作製したと発表。

キラーT細胞は日本人の6割に使用可能で、9割以上をカバーする可能性がある。

治験を経て実用化を目指し、他の感染症にも対応可能なキラーT細胞を開発する計画。

 新型コロナウイルスに感染した細胞を検知して攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」をヒトの胚性幹細胞(ES細胞)から世界で初めて作製したと、京都大や藤田医科大(愛知県豊明市)などの研究チームが30日、発表した。京大などは共同で特許を出願。抗がん剤治療で免疫不全状態となった重症の新型コロナ患者を対象として3年後に藤田医科大で臨床試験(治験)を進め、5年後の実用化を目指すという。

 研究グループは、ゲノム編集技術により拒絶反応が出にくくしたES細胞を元にキラーT細胞を作製した上で、新型コロナウイルスが生み出すたんぱく質を検知する遺伝子を導入。新型コロナ由来のたんぱく質を発現させたヒトの肺細胞と一緒に培養したところ、12時間でほとんどを死滅させた。

 今回開発したキラーT細胞は、「HLA(ヒト白血球抗原)」という白血球の型により、日本人の6割に使用可能。対応するタンパク質検知遺伝子のHLA型を増やすことで、9割以上をカバーできるという。

 ただ、研究用でそのままでは患者に投与できないため、3年ほどかけて治験用の細胞を作製し、安全性と有効性を確認する方針。 

 この手法で、コロナ以外の感染症に対応するキラーT細胞を作製し、凍結して備蓄することもできる。また、未知のウイルスが流行した際にも、迅速に対応することが可能という。研究チームの京大医生物学研究所・河本宏教授(再生免疫学)は「人類をウイルス感染による死への恐怖から救うことを願っている」と話している。