【ライブレポート】COMPLEX、能登地震の被災地復興を願い東京ドームライブ『日本一心』で10万人と心をひとつに

AI要約

COMPLEXの吉川晃司と布袋寅泰のチャリティーライブ『日本一心』のライブレポート。13年ぶりの再会から始まり、復興支援への思いと共に歌われた名曲まで、感動の演奏が綴られる。

ライブでは、ヒット曲やバラード、ベルリンの壁崩壊をモチーフにした楽曲など幅広いジャンルが披露され、観客との一体感も感じられた。

終盤は代表曲の連続演奏や平和への願いを込めた演奏で感動のエンディング。奇跡を起こした夜を振り返りながら、復興支援へのエールが贈られた。

【ライブレポート】COMPLEX、能登地震の被災地復興を願い東京ドームライブ『日本一心』で10万人と心をひとつに

■「今夜、共に被災地へエールを」(吉川晃司)「被災地のために、俺たちの未来のために」(布袋寅泰)

吉川晃司と布袋寅泰のユニット、COMPLEXが、能登半島地震の復興・復旧のために開催した東京ドーム公演『日本一心』の模様が、8月3日にWOWOWにて独占放送・配信。このたび、当日のライブレポートが到着した。

【ライブレポート】

1988年12月に突如結成が発表されたユニット、COMPLEX。吉川晃司と布袋寅泰という類まれな2つの個性は、眩い煌めきを放ちながら、時に融合し、時に激しくぶつかり合い、わずか2年弱で活動を停止した。21年の歳月を経た2011年7月30日・31日。東日本大震災復興支援を目的として、彼らは東京ドームでチャリティー公演を開催。それは“自分たちに今できることは何か”を考え抜き、覚悟を決めた行動だった。

あれから13年。2024年1月1日に起きた能登半島地震を受けて、彼らは再び“日本一心”を掲げ、5月15日・16日に同地でチャリティーライブを行った。2日間計10万人の大観衆で埋まった東京ドーム。場内が騒然とした空気に包まれるなか、スクリーンに“20240515-16” “日本一心” “COMPLEX”という文字が浮かび上がる。ワーグナーの「ワルキューレの騎行」とともに過去のライブ映像が紡がれ、ついにその瞬間が訪れた。

国民的アンセム「BE MY BABY」のイントロが流れると、冒頭からテンションは最高潮だ。吉川が上手から、布袋が下手から登場し、13年ぶりの固い握手を交わす。演奏を通じて、お互いの歌声とギターの音色で確かめる。語り合うよりも、音楽は雄弁で屈強だ。外傷性白内障と診断され両目を手術したばかりの吉川が、エンディングでシンバルキックに挑み、見事成功させる。秘めた決意が体を突き動かすのだろう。

「今夜、共に被災地へエールを」と吉川が思いの丈を伝えたあとに、続けて放たれたのは1stアルバムのオープニングナンバー「PRETTY DOLL」。ヘヴィなリズムが心を揺らす「CRASH COMPLEXION」、布袋のギターリフが印象的な「NO MORE LIES」と続け、客席をさらなる高揚に誘う。一瞬の静寂をギターが引き裂くような「路地裏のVENUS」では、吉川がフライングVを抱えて、ゼマティスを握る布袋と並び立つ。味わい深いふたりのハモリとともに、彼らの“音の融合”が熱を帯びていく。

「被災地のために、俺たちの未来のために」と、布袋もまた想いを言葉に託す。極上のポップチューン「LOVE CHARADE」では、布袋が両手を上げてハートマークを贈り、観衆も“LOVE”を返す。吉川も歌いながら胸の前でハートを形作り、会場中が一体となってアウトロのコーラスを歌う。誰もが笑顔が素敵なひとときだった。

「2人のAnother Twillight」「MODERN VISION」「そんな君はほしくない」の3曲では、ハイブリッドな音像が変幻自在にその表情を変えていく。ここでは布袋の“匠”とも呼ぶべきサウンドプロデュースの奥深さと、広大な海を自由に泳ぐかのような吉川のダイナミックなステージングが存分に味わえる。光と影を描いた「BLUE」、ブルージーな「Can’t Stop The Silence」、屈指の名バラード「CRY FOR LOVE」。この3曲での吉川の歌唱もまた、実に見事だった。艶やかさを失わずに、年輪とともにどこかスモーキーな味わいすら感じさせるボーカル。寄り添うような布袋のギターとコーラスには、盟友を慈しむ眼差しが確かにあった。

ベルリンの壁崩壊をモチーフにした「DRAGON CRIME」から、インストゥルメンタル曲「HALF MOON」へ。布袋のスケールの大きなギターフレーズがドーム空間にこだまする。今やHOTEIの名は世界に轟いている。その凄みに改めて感じ入った。ふたりを支えるバンドメンバーの演奏による「ROMANTICA」。湊雅史(Dr)、スティーヴ エトウ(Per)、井上富雄(Ba)、奥野真哉(Key)、岸利至(Prog)の5人が奏でる幻想的なナンバーがラストスパートの始まりを告げる。プログレッシブな「PROPAGANDA」、ストレートなロックナンバー「IMAGINE HEROES」、ハードロックテイストに溢れた「GOOD SAVAGE」と続き、ステージはクライマックスへと向かう。ふたりが織りなすギターセッションでは、男同士が互いの人生観をぶつけ合うかのようなスリリングな激しさに痺れた。

いよいよ本編は最後の2曲。代表曲「恋をとめないで」が場内のハートを着火させる。オーディエンスのシンガロングに、布袋は渾身のギターソロで、吉川は「東京ドームの夜だ」と叫び応える。「MAJESTIC BABY」では拳を突き上げ、“おまえと一緒なら”のコール&レスポンスが続く。エンディングでまたもやシンバルキックに挑むところが、吉川の漢気だと唸った。アンコール1曲目は「1990」。映像で刻まれていた数字は“1990”で始まり、最後は“2024”で終わった。過去、現在、未来。時の流れの中で紡がれていく誰もの人生を、力強く肯定した瞬間だった。アンコール最後は“表明曲”とも言える「RAMBLING MAN」。立ち止まらないふたりへの賞賛の拍手がいつまでも鳴り止まなかった。

2度目のアンコール。1stツアー以来の演奏となる「CLOCKWORK RUNNERS」は、当時バブルの喧騒を生きる者たちへの警鐘のようでもあったが、現代のデジタル社会にも繋がる普遍性が感じられた。最後の曲は平和への願いを綴った「AFTER THE RAIN」。スクリーンには昇る太陽が映し出され、客席もスマートフォンの光を点灯させて鼓動を同期させていく。再生への祈りが結晶となった、あまりに荘厳な風景だった。

吉川晃司と布袋寅泰。ミュージシャンとして、表現者として、ひとりの男として。彼らは常に真っ向勝負を挑み、体を張って“生”を刻んできた。彼らがひとつの旗印のもとに集い、音楽で奇跡を起こした夜。10万人の同志たちとともに連帯された心のエールは、復興支援という形で被災地へと届けられる。奇跡は生まれるのを待つものではなく、自ら起こすものだ。ふたりの生きざまが熱い手応えと深い感慨を残した“LIVE”だった。

PHOTO BY 横井明彦、太田好治、山本倫子、細野晋司、外山繁

番組情報

『COMPLEX 東京ドームLIVE 2024 ~日本一心~』

08/03(土)19:00~

※WOWOWプライムにて放送 / WOWOWオンデマンドにて配信

※放送・配信終了後~1ヵ月間アーカイブ配信あり