6割超の住宅が浸水したまち 住民のつながり強まるも「生活再建」道半ば 秋田・記録的大雨から1年

AI要約

2023年7月に秋田県内を襲った記録的大雨から1年。多くの住宅が浸水被害を受けた秋町楢山大元町の現状を取材。被害の爪痕は深いが、復興の兆しが見え始めている。

町内会長が語る、大雨被害後の混乱と暗闇に包まれた日々。12世帯が町を去る中、再建への希望と絆も見え隠れ。

復興途中の町では工事が進み、新しい住人が戻ってくる様子。被害の傷跡が残る中でも、住民の強さと前向きな姿勢が光る。

6割超の住宅が浸水したまち 住民のつながり強まるも「生活再建」道半ば 秋田・記録的大雨から1年

2023年7月に秋田県内を襲った記録的大雨から1年。多くの住宅が浸水被害を受けた秋田市楢山大元町は、生活再建が進む一方で、まちを離れた人も少なくない。被害を受けた住民の生活の現状などを取材した。

2023年7月14日に降り始めた大雨。

五城目町で1人が亡くなったほか、秋田市の2人の高齢者は、災害後に精神に負担がかかり心肺機能が悪化したなどとして、県内で初めて「災害関連死」と認定された。また、浸水などの住宅被害は7375棟に上っている。(2024年7月10日時点)

「ここからはいなくなった。このまちからいなくなった。息子のところに行ったのかもしれないけど」と静かに話すのは、秋田市楢山大元町の町内会長を務める伊藤達男さんだ。

楢山大元町は、2023年7月に氾濫した太平川のすぐ近く。伊藤さんは大雨被害から1年たった“今のまち”を案内してくれた。

大雨に襲われる前、楢山大元町では167世帯が生活していたが、このうち110世帯が浸水被害に遭った。2023年8月の様子を見ると、住宅の前の道路は水に漬かり、使えなくなった家具などの廃棄物が山積みだった。

当時、伊藤さんは「これ(廃棄物)が自然発火して火事になると大変。それが怖くて眠れない」と話していた。

街灯が被害を受けていたため、夜になると町内は真っ暗となり、歩く人の姿はほとんど見られなかった。

伊藤さんは「大雨の直後、電気がついていないから家に住んでいない人が圧倒的に多くて、電気がついて暮らしている家は12~13世帯くらいしかなかった」と当時を振り返る。

記録的大雨から1年。絶えず地域の変化に目を向けてきた伊藤さんによると、やっと5月中旬から工事に入ったところがある一方、まだそのまま放置され、いわゆる空き家になっている家もあるという。それでも少しずつ住宅の修繕工事が進み、地域に人の姿が見られるようになった。

伊藤さんによると、この1年間で12世帯が町内を去ったものの、「再びこのまちで暮らしたい」という人もいるという。

新たに建築工事が進む住宅の前で伊藤さんは、「『ほかのところへ行ったら友達もいなくて寂しい。やはり町内へ戻ってきたい』ということでここへ戻ってきて家を建てようかということのようだ」と教えてくれた。そして、「とてもうれしいことだ」と笑顔を見せた。

被害の爪痕や心の傷は簡単には消えない。それでも住民は前を向こうと懸命に日々生活している。

伊藤さんは「無我夢中でやってきた感じがする。水害を通じていろいろな人と接することができて、住民とすごく気持ちが近くなった。そういう点では何かをやるときに協力してくれる人も増えている」と話す。