伊藤若冲から横山大観まで目に飛び込んでくる“名品の数々”…皇居で楽しみたい“究極の日本美”

AI要約

皇居三の丸尚蔵館で開催中の「皇室のみやび―受け継ぐ美―」展について。皇室に受け継がれてきた6000点以上の美術品が展示されており、展示の幅広さと質の高さを示す。

展示は4期に分かれ、過去期には国宝指定の作品や近代日本の優品などが展示された。現在は第4期で、祝事での美術品献上などから皇室に贈られた名品が展示されている。

展示物の一例として、鎌倉時代の絵巻や平安朝の名筆、江戸時代の花鳥画などが紹介されている。これらの作品から当時の美意識や技術、作者の繊細さなどが感じられる。

伊藤若冲から横山大観まで目に飛び込んでくる“名品の数々”…皇居で楽しみたい“究極の日本美”

 考えてみれば当然だが、日本有数のお宝群は、まさにここに集っている。皇室ゆかりの日本美術の粋をそろえた展覧会が、皇居東御苑内・江戸城三の丸の地に開館した皇居三の丸尚蔵館で開催中だ。「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第4期「三の丸尚蔵館の名品」展。

 皇室に受け継がれてきた品々じつに6000点以上を、収蔵・管理・公開しているのが同館である。もともと皇居東御苑の一角で1993年から開館していたが、収蔵能力が限界に近づいたことや、さらなる積極的な展示公開を企図して、施設が拡充されることとなった。

 現在はリニューアル後の一部開館状態で、全館開館は2026年に予定されている。ちなみに「尚蔵」とは、事物を大切に保管することを指す。

 日本では古来、皇室が熱心に美術品を収集し、次代へ伝えてきたのはよく知られるところ。奈良時代、聖武天皇遺愛の品々を正倉院宝物として納めたことにはじまり、歴代天皇がコレクションを形成してきた。

 第二次世界大戦後、皇室の所蔵品は整理され、多くの品々が国有となった。1989年にも大規模な国への寄贈がなされ、宮内庁が所管することに。それら貴重な文物を保存・研究・公開していくために、三の丸尚蔵館が設立された。

 今展は、収蔵する品々の幅広さと質の高さを示さんと、全体を4期に分けて昨年来展開されてきたもの。第1期(2023年11月~12月)では《蒙古襲来絵詞》など、近年国宝指定された品を中心に展示を構成。第2期(2024年1月~3月)は横山大観《日出処日本》をはじめ、近代日本の優品が並んだ。第3期(3月~5月)は藤原定家が書写した《更級日記》など、近世までに御所などに伝えられてきた品々が館内を飾った。

 各期とも日本美術史を代表する作品がそろい、さすがの見応えだった。それらはすべて館の収蔵品なので、また近く観られる機会もめぐってくるはずだ。

 現在開催中の第4期には、過去3期に劣らぬ、いかにも皇室らしい名品が並んだ。展示テーマとしては、祝事での美術品献上などにより皇室にもたらされた品々を集成したとのこと。

 会場へ足を踏み入れ、まず目に飛び込んでくるのは、《春日権現験記絵》。鎌倉時代絵巻の最高傑作のひとつであり、むろん国宝である。明治時代に皇室に献上された。

 奈良・春日大社の創建と霊験を語る内容となっており、緻密で生き生きとした描写に、つい目を凝らしたくなる。とりわけ建設作業の現場が活写されている箇所は、当時の技術が仔細に描かれていて、往時の人々の仕事ぶり生活ぶりが、手に取るように伝わってくる。

 絵巻の横のケースに収められているのは、《粘葉本和漢朗詠集》だ。鶴や亀甲などの文様が繊細に摺り出された唐紙の上を、藤原行成によると伝わる平安朝屈指の名筆が自在に走っている。優美な筆線を目で追っていると、当時の貴族たちの美意識がここに表れていると感じられる。

 奥の壁面には、江戸時代の絵師、伊藤若冲の《動植綵絵》がある。30幅からなる花鳥画で、相国寺に寄進されたものだったが、1889年に明治天皇へ献上された。展示されているのは「老松孔雀図」「諸魚図」「蓮池遊魚図」「芙蓉双鶏図」の4幅。遠目から見れば奇抜なデザイン性や、描かれているモチーフの取り合わせの妙が、まずはおもしろい。徐々に絵へ近づいていくと、あらゆる細部が寸分の緩みなく描き込まれているのに気づき、作者の繊細さと技量、根気に驚かされる。描かれたどの動物や植物からも溢れる生命感を受け取ることができて、観ているこちらも生命力がみなぎってくる。