王貞治さん農業を語る 「食べる喜び」や「食への感謝」大切に

AI要約

食べることは生きる源であり、食べる喜びが幸せにつながる。食べる喜びは生産者の喜びにもつながる。若い人には農業への関心と情熱を持ってほしい。

野球のように農業も苦労して続けることが大切であり、消費者はその苦労を理解し、感謝を忘れずにいてほしい。生産者と消費者の距離を縮めるためにも互いの立場を理解し合うことが必要。

スポーツ選手が目指すスターがいることで子どもたちはさらに頑張る。一流になるための方法は「工夫」し、挑戦し続けることが重要だ。

王貞治さん農業を語る 「食べる喜び」や「食への感謝」大切に

 日本の農業を未来につなぐためには、食や農業の大切さを国民に広く、深く伝えていくことが求められている。福岡ソフトバンクホークス会長で、世界少年野球推進財団(WCBF)の理事長を務める王貞治さんに、食や農業への思いを聞いた。

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 食べることは生きる源だ。いくら頭で考えても、食に満足していなければ、考え方もずれてきてしまう。大人は、まずは好き嫌いなく、何でも食べてみる大切さを子どもたちに伝えてほしい。体づくりや栄養だけじゃない。食べる喜び、満腹感が人間としての幸せにつながる。

 食べる喜びは、生産する人の喜びにもなる。農業は重労働で大変な面もあるだろうが、関心を持つ若い人も多いのは喜ばしい。必要としてくれる人の喜びのため、良い物を作るんだという強い思いを持ってほしい。

 野球が上手になるには、苦労しなければならない。良いプレーをするには反復練習が欠かせない。健康とも戦う必要がある。農業も同じでしょう。土づくりから始まり、日々のしんどいことを乗り越えてこそ、良いものができる。結果が出た喜びで頑張れるし、さらにのめり込めるのではないか。

 消費者はそうした苦労を理解し、食への感謝を忘れないでほしい。自給率を自分たちで上げるんだという気持ちを持ってくれたら、農業に関わる人も多くなるだろう。今は、消費者と生産者があまりにも離れ過ぎてしまっている。互いの立場をもっと理解し、感謝することが距離を縮めることになる。

 世界的に活躍するスポーツ選手が増えているのは、スターが出てきて大きな目標になっているから。大谷翔平選手のような突き抜けた存在がいれば、子どもたちもさらに頑張る。そこからまた一流のスターが誕生し、土台が大きくなっていく。

 一流になる方法は絶対にある。必要なのは「工夫」すること。情報はたくさんある時代。情報をどう集め、咀嚼(そしゃく)し、取り入れるのか。自ら探し求め続け、挑戦を繰り返すことが道を切り開く。(聞き手・岡信吾)

 1940年、東京都生まれ。巨人で世界記録となる通算868本塁打。巨人、ダイエー、ソフトバンクで監督を務めた。理事長を務めるWCBFは93年から「JA全農WCBF少年野球教室」を主催する。