研究室には多数の毒物 管理は「院生ら信頼するしかない」 大阪公立大の青酸ソーダ窃盗

AI要約

大阪公立大が大学内の研究室で保管していた毒物が紛失した事件で、同大学院生だった会社員が逮捕された。大学内で毒物を保管する際の管理体制や信頼関係について専門家が指摘している。

逮捕された男は元同大学院生であり、毒物の紛失は今年5月に発覚した。専門家によると、毒物を個別に管理するのは難しいため、研究室の信頼関係が重要であるとされている。

管理体制に関しては、法律に基づいており特に問題はないとされているが、再発防止策についてはより厳密なシステムが求められているとの意見もある。

研究室には多数の毒物 管理は「院生ら信頼するしかない」 大阪公立大の青酸ソーダ窃盗

大阪公立大が大学内の研究室で保管していた青酸ソーダ(シアン化ナトリウム)など毒物計50グラムを紛失した問題で、同大大学院生だった会社員の男が28日、逮捕された。大学では研究室内に毒物を保管しているケースも多く、近年は紛失なども問題になっている。専門家は、毒物を個別に管理する手法には限界があり、管理は研究などに使う大学院生らを「信頼するしかない」としている。

今回、窃盗の疑いで逮捕されたのは同大卒業生の会社員で、事件当時、同大学大学院生だった竹林尚志(まさし)容疑者(30)=滋賀県甲賀市。大学が最後に保管を確認したのは昨年6月下旬の棚卸しで、今年5月2日に教員が同様の作業をした際、紛失していることに気づいた。同月10日まで、教員と学生が捜索したが発見できず、大阪府警に被害届を提出した。

大学における毒物の保管体制について、昭和大学大学院薬学研究科の沼澤聡教授は、「私の研究室でも毒物劇物取締法に基づき、鍵のかかる保管庫で厳重に管理し、鍵を開けた人の氏名とどの試薬を使ったかを記録している」と説明する。ただ、仮に試薬を取り出した人物が黙って別の薬品を取り出しても、簡単には他者には分からないという。沼澤氏は「それを防ぐなら試薬を1本ずつ管理しなければならないが、私の研究室でも劇薬は少なく見積もって100ほどあり、現実的には難しい」と話す。ただし沼澤氏も、覚醒剤や麻薬を管理する金庫の鍵は、大学院生にも触らせないと語る。

沼澤氏は、大阪公立大の管理体制について「法律に基づいており、特に問題はない」と指摘する。再発防止策に関しては「(試薬を扱う)大学院生らの人物を見極めるしかないが、研究室は彼らとの信頼関係で成り立っている。疑ったうえで防止する管理システムを作るのは難しい。法律をさらに厳しくすると研究がしにくくなり、自分たちの首を絞めることにもなりかねない」と懸念する。