日中韓FTA交渉加速へ、3首脳が共同宣言を発表 北朝鮮問題では踏み込めず

AI要約

日中韓首脳会談がソウルで開かれ、共同宣言が発表された。経済分野を中心に幅広い協力策が進められることで一致。

日中韓FTAの締結に向けた交渉の加速で合意し、関係悪化による中断から再開への動きがある。

朝鮮半島の非核化や拉致問題について各国の立場が強調され、日韓と中国の立場の違いが改めて明確となった。

【ソウル=原川貴郎、桜井紀雄】岸田文雄首相と中国の李強首相、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は27日、ソウルで日中韓首脳会談を開き、共同宣言を発表した。3首脳は、2019年を最後に中断している「日中韓自由貿易協定(FTA)」の締結に向けた交渉の加速で合意するなど、経済分野を中心に幅広い協力策を進めることで一致した。

日中韓首脳会談は19年12月に中国・成都で開かれて以来、約4年半ぶりの開催。日中韓が12年11月に開始を宣言したFTA交渉も、関係悪化を受けて途絶えていた。

共同宣言には「自由で公正で包括的な日中韓FTAの実現に向け、交渉を加速していくための議論を続ける」と明記。岸田首相は会談で「ハイレベルな規律を含め、未来志向のFTAの在り方について意見交換していきたい」と述べた。

3首脳は、3カ国の首脳や外相による会談を中断することなく、定期的に開く必要性を確認。3カ国協力の制度化を促進することが、北東アジア地域の平和と安定、繁栄にも寄与するとの認識を共有した。

岸田首相は、北朝鮮が27日未明に行った人工衛星打ち上げ通告にも触れ、「発射を強行すれば、国連安全保障理事会決議に違反するもので、強く中止を求める」と強調した。

首相は共同記者発表でも「北朝鮮の非核化と朝鮮半島の安定が日中韓の共通利益である点を改めて確認した」と説明。日本人拉致問題の即時解決に向け、中韓両首脳に支援を求め、理解を得たと述べた。

ただ、共同宣言では「朝鮮半島の非核化や拉致問題についてそれぞれ立場」を強調したとし、「朝鮮半島問題の政治的解決のために引き続き前向きに努力すること」に合意するとだけ記された。安保理でもロシアとともに北朝鮮を擁護してきた中国の意向が働いたとみられる。経済を除く、北朝鮮問題などでは日韓と中国の立場の違いが改めて鮮明となった。