日中韓が5月27日に4年5カ月ぶりの首脳会談、関係正常化なるか 貿易進展へ協議、安保では隔たりも

AI要約

日中韓首脳会談が4年5カ月ぶりに開催されることが正式発表された。会談では経済通商、人的交流、気候変動など6分野で連携強化を確認し、共同宣言が発表される見通し。

3カ国の関係正常化が焦点となり、米中対立の影響などが背景にある。中国は米国主導の対中包囲網に対抗し、3カ国の協力を強化したい考え。

日韓は高度技術の流出阻止や自由貿易を推進しながら、中国との経済協力を進展させる意向。相互投資の拡大や北朝鮮問題、台湾問題にも協力を求められる。

 【ソウル山口卓、北京・伊藤完司】韓国大統領府は23日、日中韓首脳会談を27日にソウルで開くと正式発表した。26日にはそれぞれ2国間会談も行う予定。日中韓首脳会談の開催は4年5カ月ぶり。経済通商、人的交流、気候変動など6分野で連携強化を確認し、共同宣言を発表する見通しだ。米中対立を背景に、日韓と中国の関係が悪化する中、東アジアの平和と安定に向けて3カ国の関係正常化を図れるかが焦点となる。

 日本の林芳正官房長官は23日の記者会見で「前回会談から国際情勢が変化する中、3カ国の首脳が協力の方向性を議論することは地域全体にとって重要な機会となる」と発言。韓国大統領府国家安保室第1次長は「韓日中3カ国が協力体制を完全に復元し、正常化する分岐点になる」と強調し、中国外務省の副報道局長は3カ国の協力に「新たなエネルギーを注ぎ、ウィンウィンの関係を実現することを期待する」と述べた。

 日中韓首脳会談には岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出席する。同会談は2019年12月に中国・成都で開かれて以降、新型コロナウイルスや関係悪化の影響で途絶えていた。

 米国主導の対中包囲網を切り崩したい中国は、米国が半導体の対中輸出規制を日本と韓国に迫っていることに危機感を抱いており、日韓の米国協調路線にくさびを打ち込みたい考えだ。一方、日韓は高度技術の流出阻止やサプライチェーン(供給網)の安定を図りつつ、自由貿易を推進する立場から中国との経済協力の進展を目指す。

 3カ国は相互投資の拡大も確認する。中国は不動産市場の低迷が続き、外貨獲得にも苦戦している。中国の王毅外相が昨年11月の日中韓外相会談で日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の早期再開を要求した背景には、日韓から投資を呼び込みたい思惑も垣間見える。

 日韓は北朝鮮の核・ミサイル開発問題で「後ろ盾」となっている中国に建設的な役割を果たすよう求める。

 台湾問題でも日韓は軍事圧力を強める中国を念頭に、東アジアでの一方的な現状変更の試みに懸念を示す見通しだ。中国軍は今月23日から台湾周辺で軍事演習を実施。13日の中韓外相会談で王氏は「一つの中国」の原則に沿って慎重に対応するよう求めたとされ、同様の主張を繰り返す可能性が高い。

 26日は日韓、中韓の2国間会談も予定。日中首脳会談も調整中で、実現すれば23年3月に首相に就任した李氏との初会談となる。

 日韓首脳会談では、通信アプリLINE(ライン)の個人情報流出で、日本の総務省がLINEヤフーを行政指導した問題を扱う可能性がある。元徴用工訴訟の解決策を巡る日本の役割なども議論される見通しだ。

 日中首脳会談は、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出問題やスパイ容疑での邦人拘束問題がテーマになりそうだ。ともに「短期的には中国側の譲歩は期待薄」(日本政府関係者)との見方がある。