「供述誘導」主張の元広島市議、2審も有罪 河井元法相の買収事件

AI要約

元市議が公職選挙法違反で元法相から現金を受け取った買収事件について、控訴審で1審と同様の有罪判決が出された。

元市議は30万円を受け取りながら妻の選挙支援を行い、報酬の趣旨を理解していたことが指摘された。

弁護側は証拠として録音データの証明を求めたが、却下され、元市議は判決に不満を示している。

「供述誘導」主張の元広島市議、2審も有罪 河井元法相の買収事件

 2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、元法相の河井克行元衆院議員(61)から現金を受け取ったとして、公職選挙法違反(被買収)に問われた元広島市議の控訴審判決が22日、広島高裁であった。森浩史裁判長は罰金15万円、追徴金30万円とした1審・広島地裁判決(23年10月)を支持し、弁護側の控訴を棄却した。

 元市議の木戸経康(つねやす)被告(68)は東京地検特捜部検事の任意聴取で供述を誘導されたため、違法な起訴だったと主張。裁判を打ち切る「公訴棄却」を求めていた。

 森裁判長は1審と同様に「検察が不起訴を前提に取り調べ、元市議が検察の意に沿う供述をしたことは否定できない」と指摘。しかし、検察審査会の議決を経て起訴されたことを踏まえ、「公訴権を乱用した重大な違法があったとは言えない」と判断した。

 判決によると、元市議は現職だった19年4月、元法相の妻、案里元参院議員(50)を当選させるための選挙運動の報酬と知りながら、現金30万円を元法相から受け取った。森裁判長は「(元市議は)報酬の趣旨が含まれていたと認識していた」と述べ、弁護側の無罪主張を退けた。

 弁護側は控訴審で、元市議が聴取時のやりとりをひそかに録音したデータの証拠採用を求めたが、1審に続いて却下されていた。データの一部によると、検事は「認めている態度を示して不起訴であったり、軽い処分にしたい」などと述べていた。最高検は23年12月、この取り調べが「不適正」だったとする内部調査結果を公表している。

 高裁判決を受け、元市議は「全く納得できない。検察には事実を述べてきたが、受け入れてくれなかった」とのコメントを出した。弁護人の田上剛弁護士は記者会見で、録音データが証拠採用されなかったことについて「(事件と)真っ正面から向き合っていない。いろいろな証拠を見てから判断すべきだ」と批判した。【中村清雅、井村陸】