「天皇をつかえ」…終戦のときイギリスの「チャーチル」が、アメリカに伝えた「意外なメッセージ」

AI要約

日本の権力構造を歪める「ウラの掟」について、軍事上の密約の起源から始まり、日米合同委員会の実態を解明する。

日本が戦後の歴史を「降伏」という現実から目をそらす傾向にあり、国際的な常識とのずれを指摘する。

孫崎享氏の著書や外務省幹部による示唆から、日本が戦後の歴史に対する見方を問い直す必要があることが語られている。

「天皇をつかえ」…終戦のときイギリスの「チャーチル」が、アメリカに伝えた「意外なメッセージ」

日本には、国民はもちろん、首相や官僚でさえもよくわかっていない「ウラの掟」が存在し、社会全体の構造を歪めている。

そうした「ウラの掟」のほとんどは、アメリカ政府そのものと日本とのあいだではなく、じつは米軍と日本のエリート官僚とのあいだで直接結ばれた、占領期以来の軍事上の密約を起源としている。

『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』では、最高裁・検察・外務省の「裏マニュアル」を参照しながら、日米合同委員会の実態に迫り、日本の権力構造を徹底解明する。

*本記事は矢部 宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)から抜粋・再編集したものです。

本書でいま、私がお伝えしているような大きな日本の歪みについて、多くの方が関心を持つようになったきっかけは、2012年にベストセラーとなった孫崎享氏の『戦後史の正体』だったかもしれません。

外務省の国際情報局長という、インテリジェンス部門のトップを務めた孫崎氏は、同書の第1章を、次のような少し意外な問いかけから始めています。

「日本はいつ、第二次大戦を終えたのでしょう」

こう聞くと、ほとんどの人が、「1945年8月15日に決まっているじゃないか」というが、それは違う。8月15日が「終戦記念日」だというのは、世界の常識とは、まったくかけ離れているのだと孫崎氏はいうのです。

「私は米国や英国の外交官に友人がたくさんいます。彼らに「日本と連合国の戦争がいつ終わったか」と聞くと、だれも8月15日とはいいません。かならず9月2日という答えが返ってくるのです」

世界の常識からいうと、日本の「終戦記念日」である8月15日には何の意味もない。

国際法上、意味があるのは日本がミズーリ号で「降伏文書」にサインし、「ポツダム宣言」を正式に受け入れた9月2日だけだからです。

それなのに、なぜ日本では、9月2日のことを誰も知らないのかというと、

「日本は8月15日を戦争の終わりと位置づけることで、「降伏」というきびしい現実から目をそらしつづけているのです。

「日本は負けた。無条件降伏した」

本当はここから新しい日本を始めるべきだったのです。しかし「降伏」ではなく「終戦」という言葉を使うことで、戦争に負けた日本のきびしい状況について、目をつぶりつづけてきた。それが日本の戦後だったといえるでしょう」