【自民党総裁選】9候補全員が裏金問題に及び腰 20%占める裏金議員…得票への影響恐れ?

AI要約

自民党総裁選において、候補者全員が派閥裏金事件の再調査に慎重な姿勢を示す中、不記載金額の処分などについて意見が分かれた。

裏金問題は昨年秋に発覚し、不明なまま幕引きが図られてきたが、不透明さが議員票に影響を与える可能性があると指摘されている。

候補者は今後の政治資金の透明化や財政再建に関しても議論を行ったが、回答は具体性を欠いている箇所が多かった。

 自民党総裁選(27日投開票)に立候補した9候補は13日、党本部で共同記者会見を行った。派閥裏金事件の真相究明に向けた再調査に、候補者全員が後ろ向きな姿勢を示した。

 小泉進次郎元環境相は、政治資金収支報告書への不記載額が唯一3000万円台だった二階俊博元幹事長を不問とし批判が高まった党の処分について「厳正に実施された」と主張。国民の政治不信の根底には政治とカネの問題の「不透明さ」があるとし、政党が議員に支出し使途公表義務のない政策活動費の廃止論にすり替えた。再調査については、新たな事実が判明した場合のみ必要とした。

 河野太郎デジタル相は「実態の究明ができなかったのは、じくじたる思い」と問題意識を示しながらも「捜査権のない党の調査で検察以上の究明ができるのか、技術的に難しい」として、持論である不記載相当額の返納を改めて訴えた。高市早苗経済安保担当相は「追加的な調査をすることは考えていません」と言い切った。

 安倍派など派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題は昨年秋に発覚。販売ノルマ超過分の所属議員側への還流に東京地検特捜部のメスが入った。

 自民党は不記載の有無についてアンケートを実施し、裏金議員らを処分。「抜け穴だらけ」と批判された改正政治資金規正法を通常国会で成立させるなど、お茶を濁して幕引きを図った。しかし、裏金づくりが始まった経緯やその使途は不明なままだ。

 候補者全員が及び腰であることついて、野党関係者は「裏金議員の不興を買って議員票の得票に影響するのを恐れているのだろう」と指摘。不記載が確認された議員は82人。いわば“裏金大票田”だ。離党勧告や党員資格停止処分を受けたり、辞職した議員を除いても、全議員票367票中で約20%を占める。同関係者は「議員票の比重が増す決選投票を見据えれば、なおさらだ」と吐き捨てた。

 会見では今後の新たな取り組みについて言及する候補者も。石破茂元幹事長は「政党のガバナンスを律する法律作りが急務」とし、加藤勝信元官房長官は「国会で独立した第三者機関をつくり、政治資金の透明化を図る取り組みを1年以内に行う」などと強調。しかし実態解明もせずに今後を語る姿は、多くの国民にむなしく映ることになりかねない。

 ≪国民負担増への見解も≫財政再建の観点から国民負担増への見解なども問われたが、こちらも正面から答えない回答が相次いだ。高市氏は「本当に困っている方に手当てする」と説明し、小泉氏は「次世代に痛みを残さないために改革をする」、茂木敏充幹事長は「負担増への不安に応える」と述べるにとどめた。解雇規制の緩和も論点となり、小林鷹之前経済安保担当相は「安易な緩和は働く人を不安にさせる」と懸念。小泉氏は自身が出馬会見の際に掲げたが、その後の民放番組で労働市場の流動化が目的で「解雇の緩和でも自由化でもない」と釈明している。