小中学校の夏休み「日数」も「宿題」も減少の動きあり 教員と家庭の負担軽減のはずが思わぬ“落とし穴”も

AI要約

夏休みが短縮されつつある現状について、教育研究家が解説。自治体の取り組みや背景、効果などを述べる。

教員の労働環境改善や家庭環境の変化を受け、夏休み短縮のメリットがあると指摘。

子どもや親の負担軽減、格差の問題などから夏休み短縮の必要性が浮上している。

小中学校の夏休み「日数」も「宿題」も減少の動きあり 教員と家庭の負担軽減のはずが思わぬ“落とし穴”も

 格別に暑い日が続いた夏休みが終わり、全国の小中学校は新学期を迎えた。大量の宿題を何とか終わらせ、友達とは久しぶりの再開を果たし……というイメージをお持ちの大人も多いかもしれないが、実は現在の夏休みは、少しずつその様を変えつつある。

「まだ全国的な傾向、とまでは言えないものの、夏休みの短縮に向かっている自治体が現れてきたのは事実です」

 そう話すのは、教育研究家で、一般社団法人ライフ&ワーク代表理事の妹尾昌俊氏。

「たとえば茨城県守谷市の公立小中学校はすでに5日ほど夏休みが短くなっています。その分、通常時の1日あたりの授業数を減らすことができ、教員や児童・生徒の負担軽減に繋がるという狙いです。文科省としても守谷市のような事例を全国の教育委員会に周知し始めたところです」

 本来は夏休みだったはずの期間に5コマ×5日の登校日を設けることで、25コマ分の授業を進めることができる。現在の小中学校は1日あたり6コマ授業の日が大半であるが(小学校低学年では少ない場合もある)、平時で5コマ授業の日を増やし、日々の下校時間を早めようというわけだ。

 背景には、変わらぬ教員の長時間労働と、家庭環境の変化があるとされる。

「教員にとっては、平時の授業数が1コマ減るだけで、教材作成や生徒の放課後対応などが余裕をもってできるようになりますから、現状の過酷な労働環境を考えると、夏休み短縮に一定の効果は期待できるでしょう。また、ひとり親家庭や困窮家庭を中心に、『夏休みを短くしてほしい』という声が高まっている傾向もあります。毎日昼食を用意する負担などに加え、金銭的な事情で旅行などに連れていけないことで、子どもが同級生との“格差”を感じるのではないかという悩みが生じているのです」

“大人の都合”によって子どもの楽しみが削られつつあるとするならば不条理を感じ得ないところもあるが、これもまた時代の潮流か。

「たしかに『夏休みが減る』と聞くと残念に感じる子も多いかもしれません。一方で、毎日6コマという授業数が児童・生徒にとって負担になっているのもまた事実。大人だって、1日に5、6時間も授業や研修を受けるのは大変でしょう。そう考えると、教員、子ども、そして保護者という三者の負担を軽減する手段として、一定の意味はあると思います」