【橘玲『DD論』インタビュー第3回】世界は自由になり、多くの男は脱落し、女は幸福度が下がった
橘玲氏が社会評論ジャンルの書籍を通じて取り上げてきたタブー、論争的なテーマについて紹介されている。
最新刊では、知能格差やモテ格差、エロス資本のマネタイズに焦点を当てた新たな構造問題が取り上げられている。
過去の著書から現代社会の問題として男性の非モテ、女性のエロス資本の加速化などが取り上げられており、最新の科学研究の知見も基に事件を論評している。
橘氏は一般書ではタブーとされてきた遺伝の影響や知識社会の残酷さを扱い、日本の言論空間を広げる一助となることを期待している。
・『バカが多いのには理由がある』(2014年)
・『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(2016年)
・『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』(2016年)
・『専業主婦は2億円損をする』(2017年)
・『朝日ぎらい』(2018年)
・『上級国民/下級国民』(2019年)
・『女と男 なぜわかりあえないのか』(2020年)
・『無理ゲー社会』(2021年)
・『バカと無知』(2022年)
・『世界はなぜ地獄になるのか』(2023年)
・『運は遺伝する』(2023年)
――この10年、常にその時代におけるタブー、論争的なテーマを取り上げてきた橘玲氏が上梓した社会評論ジャンルの書籍タイトルの一部だ。
8月26日に発売された橘氏の最新刊『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』(集英社)で、多くのページが割かれているのが、現代社会における「知能格差」と男性の「モテ格差」の残酷性、女性の「エロス資本」のマネタイズ加速化といった新たな構造問題だ。
これらの問題が背景になっていると思われる近年の事件(たとえば「頂き女子」)にも、本書では最新の科学研究の知見などを踏まえた多くの論評を寄せている。
「DD(どっちもどっち)」な思考ができる人が仕事で成功し、そうではない人がSNSでモンスター化している――そんな″不都合な真実″について語ったインタビュー第2回に続いて、今回のテーマは「男と女のDDな現実」。現代社会において、男性と女性はそれぞれどんな問題に直面しているのか?
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――大ベストセラーになった『言ってはいけない』(新潮新書)の発売から8年たちました。2017年の新書大賞を受賞した同作ですが、発売後、新聞の書評はまったくなかったそうですね。
橘 私が知るかぎり、ひとつもなかったと思います。どう反応していいか、わからなかったんじゃないですか。認知能力に遺伝的な影響があるとか、発達障害や精神障害は遺伝の影響がかなり大きいというのは、アメリカでは一般書にも当たり前に書かれていますが、日本ではずっとタブーでした。
この本を書くときも、出版関係者から「そんな本を出せるわけがない」とか「大変なことになる」とずいぶん言われました。しかし発売してみると、発達障害や精神障害のある子を持つ親からの反響がすごく大きくて驚きました。「ちゃんと子育てしないからそうなるんだ」という周囲の視線にずっと耐えてきたけれど、「子育てが原因ではない」と初めてはっきり言ってもらえたと。
今では遺伝の話もそれなりに語られるようになってきたので、日本の言論空間を広げることに少しは貢献できたのかなと思っています。
――その後の『上級国民/下級国民』、『無理ゲー社会』(共に小学館新書)では、知識社会の残酷さに加えて、特に男性の「非モテ」が人生にもたらす影響、そのことが社会に与えるインパクトについても書かれてきました。