備蓄のコメ、放出しないの?  「令和の米騒動」、政府は慎重

AI要約

コメが品薄となり「令和の米騒動」が起きている中、政府の備蓄米の放出が注目されている。

政府は備蓄米の放出を慎重に考えており、新米の供給が本格化するまで民間在庫で事態を抑える方針。

過去の放出事例や民間在庫の状況から、政府の今回の対応が検討されている。

備蓄のコメ、放出しないの?  「令和の米騒動」、政府は慎重

 スーパーなどの店頭でコメが品薄となり「令和の米騒動」とも言われる状況に陥った。こうした中、消費者の関心を集めるのは政府が不測の事態への対応として備蓄しているコメの扱い。大阪府の吉村洋文知事が放出を要請したが、政府は慎重な立場を取っている。なぜなのか。

 ―政府備蓄米とは? 

 2年連続で不作となったり、10年に1度の不作となったりしても、次の新米収穫まで国産米で持ちこたえられるよう政府が備蓄しているコメのこと。1993年の冷害による凶作を受け、95年に制度が始まった。目安は100万トン程度と定めており、今年6月末時点で91万トンを保管している。

 ―なぜ放出しないの? 

 備蓄米の放出は、民間での取引が基本となっているコメの需給や価格に影響を与える恐れがある。現在の品薄は、新米に切り替わる端境期に、南海トラフ地震の臨時情報で消費者の買いだめが生じたことも一因とされる。農林水産省は今年の新米がまもなく本格的に出回るので、それまでは民間の在庫で対応できるとの判断だ。特に新米の取引時期だけに政府も慎重とみられる。

 ―過去の放出事例は? 

 2011年の東日本大震災や16年の熊本地震への対応で実績がある。放出は大凶作によるコメ不足や災害による緊急事態が対象だが、23年産米の作況は平年並み。24年産米(新米)の予想収穫量も8月15日時点で主要産地を含む31都府県が「平年並み」で、農水省は順調としている。

 ―民間在庫は過去最低と聞いた。

 6月末時点のコメの民間在庫量は156万トンと、1999年以降で過去最低の水準だ。23年産米の作況は平年並みでも猛暑の影響で1等米の比率が低かったことや、インバウンド(訪日客)需要増などで消費が堅調なのが原因だ。とはいえ、新米が出回るまでの在庫量は確保している。

 ―政府の対応は新米を待つだけ? 

 農水省は卸売業者などに対して円滑な流通の確保を文書で要請。「スーパーにしっかり行き渡ることをお願いした」(坂本哲志農水相)という。消費者にも冷静な対応を求めている。