「自衛隊=レスキュー隊」という認識が強すぎる…ロシア・ウクライナ戦争でわかった日本の大きな課題

AI要約

ウクライナへのロシアの軍事侵攻が続き、その背景や影響について国際法・防衛法政研究者の稲葉義泰さんが議論する。

日本国民の安全保障意識について、ウクライナ戦争の影響がどう広がっているかについて考察。

専門家たちも予想外の展開として、ロシアのウクライナ侵攻が実際に行われた驚きや戦争の非合理性について述べられている。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が続いている。国際法・防衛法政研究者の稲葉義泰さんは「軍事的に非合理的な戦争でも起きてしまうことが露わになった。そんな時代の中で自衛隊は何のためにあるのかを、いま一度考えるときに来ている」という――。(後編/全2回)(インタビュー・構成=ライター・梶原麻衣子)

■「ロシア・ウクライナ戦争」における最大の衝撃

 (前編より続く)

 ――ウクライナ戦争が勃発してから2年半。内戦や紛争ではなく、国家間の大きな戦争が起きてからの過程を目の当たりにして、日本国民の安全保障意識に変化はあったのでしょうか。

 【稲葉】確かに何らかの変化はあったのだと思います。ただし「戦争は本当に起きるものなのだ、それに備えなければならない」というところまで行っているかと言えば、それはわからないところで、やはり無関心の方が大きいのではないでしょうか。

 無関心、というのは必ずしもニュースを見ない、全く知らないということではなく、「情報に接してはいるけれど、自分とは関係のないことだととらえている」姿勢を指します。例えば岸田政権はウクライナ支援策にかなり力を入れていますが、国民からの評価にはつながっていません。

 ウクライナ戦争に関する報道量は多いのでしょうし、今はネットでも情報を得られます。SNSでも、言及している人は少なくありませんが、しかしその中身はどうかと言えば、「ロシアもウクライナもどっちもどっち、喧嘩両成敗」といったものも少なくありません。しかしこれは実際には「国際法を破ったのは誰か」という非常にクリアな話で、どっちもどっちにはなりえないのです。

 また、さらにその先に進んで「我が国も当事国になるかもしれない。準備しておかなければ」という意味で意識している人はそう多くはないように思います。どこか他人事。やはりウクライナは地理的に遠すぎたのかもしれません。

■専門家は「まさかやるはずがない」と思っていた

 ――実際にはロシアという日本の隣国が、反対側の隣国であるウクライナに侵攻したという話なのですが、そういう捉え方はできていないですね。

 ウクライナ戦争の衝撃は何かと言えば、軍事的合理性から考えれば起こさないはずの戦争を、国家の指導者の決断一つで起こしてしまったことです。

 軍事の専門家からしても、当初は「まさかやるはずがない。脅しだろう」と思っていたものが、「あれ、まさか本当にやるつもりか」と言っているうちに、本当に始まってしまいました。

 我々はどこかで「そうはいっても国家の指導者は合理的な判断を下すだろう」と思っていたのですが、ロシアの場合はそうではなかった。ましてや21世紀に入ったこの世界で、あれほど原始的なやり方で戦争をするのかと。大量虐殺まで行っていますし、現代の常識では考えられないような事態になっています。