福島処理水放出1年で膠着する日中 水産物禁輸は首脳合意で協議続くも深い溝

AI要約

岸田文雄首相は、福島第1原発処理水の海洋放出に関連し、中国の日本産水産物輸入停止に反対し、即時撤廃を求める考えを示した。

首相は漁業支援策や経済対策を検討し、漁村の活性化などに取り組む方針を表明した。

日中間の対話は膠着状態であり、中国は現在も核汚染水とみなし反対の姿勢を示している。

福島処理水放出1年で膠着する日中 水産物禁輸は首脳合意で協議続くも深い溝

東京電力福島第1原発の処理水海洋放出は24日、開始から1年を迎えた。岸田文雄首相は同日、福島県いわき市の小名浜魚市場を視察し、放出を受けた中国による日本産水産物の全面的な輸入停止は「科学的根拠に基づかない措置であり、受け入れることはできない」と述べ、改めて即時撤廃を求める考えを示した。ただ、日中間の協議は膠着(こうちゃく)状態で、解決の見通しは立っていない。

地元の漁業協同組合関係者と意見交換で述べた。首相は視察後、記者団に対し、水産業の支援策などについて近く関係閣僚会議を開くとした上で、「秋に策定を目指す経済対策も見据え、対策の方向性を示したい」と表明。漁船・養殖施設の拡充を支援する法改正や、漁村の活性化に向けた新たな支援制度を創設する考えを示した。

首相は昨年11月、米サンフランシスコで中国の習近平国家主席に規制の即時撤廃を要求。両首脳は対話を通じ問題を解決する方策を見いだすことで一致した。これを受け、両国の省庁関係者や専門家が今年に入り、対話を重ねている。

上川陽子外相も7月、ラオスで中国の王毅外相と会談し、食品輸入規制の即時撤廃を改めて強く求めた。両外相は問題解決に向けた協議プロセスを「加速していく」ことで一致した。外務省幹部は「お互いがなんとかしたいという気持ちの表れだ」と解説する。

ただ、今も処理水を「核汚染水」と呼ぶ中国との隔たりは大きい。王氏は会談で、関係国などが参加する処理水の長期的な国際モニタリング体制の構築を要求した。同様の取り組みは国際原子力機関(IAEA)が既に行っており、日本側は屋上屋を架す中国の求めには否定的だ。

「日本の一方的な原発汚染水海洋放出に反対する中国の立場に変更はない」。中国外務省の毛寧報道官は今月7日、8回目の海洋放出開始を受けた談話でこう強調した。中国では習氏への権力の一極集中が進んでおり、外相や事務レベルで対話を重ねても、習氏の決裁がなければ前進は見通せない。その習氏は、5月に北京で会談したロシアのプーチン大統領との共同声明で処理水を「核汚染水」と呼び、海洋放出に「深刻な懸念」を表明した。