「いったい、なんで…」対策班リーダーが語った、“もっぱら肉食”の怪物ヒグマ「OSO18」への違和感〈4年間で66頭もの牛を襲う〉

AI要約

2023年7月30日、北海道東部の釧路町で一頭のヒグマが駆除された。牛を襲い続けていたOSO18というヒグマの捕獲について、対策班の藤本氏が違和感を感じる。

南知床・ヒグマ情報センター理事長だった藤本氏が、仲間のハンターと共にOSOの捕獲に乗り出す。2年の間に66頭もの牛を襲ったOSOの特徴や異常な行動が明らかにされる。

しかし、捕獲まで追い詰める頃になって、予測外の結末がやってくる。その攻防の詳細は藤本氏の手記に詳しく記されている。

「いったい、なんで…」対策班リーダーが語った、“もっぱら肉食”の怪物ヒグマ「OSO18」への違和感〈4年間で66頭もの牛を襲う〉

 2023年7月30日。北海道東部の釧路町で一頭のヒグマが駆除された。「OSO18」と名付けられたそのクマは4年間で66頭もの牛を襲っていた。

 そのOSOが駆除されたことで騒動は一応の決着を見たが、「OSO18特別対策班(以下・対策班)」リーダーの藤本靖氏は違和感を拭いきれなかった。

「いったい、なんで掌がこんなに腫れてるんだ?」

 そう首を傾げる藤本氏の手には、駆除直後のOSOを撮影した写真があった。

◆◆◆

 NPO法人「南知床・ヒグマ情報センター」理事長(当時)だった藤本氏が、対策班リーダーとして仲間のハンターたちとOSOの捕獲に乗り出したのは、2021年秋のことである。

 OSOによる牛の襲撃は2019年夏から始まっていたが、この2年で目撃情報はわずか1件。被害が集中していた標茶(しべちや)町・厚岸(あつけし)町の関係者による懸命な対策を嘲笑うかのようにOSOは襲撃を重ねていた。

 藤本氏はOSOの特徴をこう語る。

「ビビりといっていいほど警戒心が強く、とにかく人間を徹底的に避ける。移動時は川の中や橋の下を通り、足跡が人目につかないようにまでしていました」

 さらに異様だったのは、その偏った食性である。

「通常、クマが食べるのは草木類や果実類など植物性のものが8、9割を占めますが、OSOはそれらを口にした形跡がなかった。専ら肉食で、牛を襲っていないときは、エゾシカの肉を食べていたようです」

 森の中には一部の不届きなハンターが、撃ったエゾシカの美味な部分だけ持ち帰り、残りを不法投棄していく場所もあるという。

 藤本氏らはそうした場所を渡り歩くOSOの行動を予測して罠やカメラを設置。2023年初夏には捕獲まであと一歩のところまで追い詰める。その攻防の詳細は、このほど藤本氏が上梓した手記『 OSO18を追え“怪物ヒグマ”との闘い560日 』(文藝春秋)に詳しいが、結末は意外な形でやってくる。