「地面師」を目指す双子の姉妹が「数億円もの大金」を騙し取るまで…「理解しがたい犯罪」はなぜ行われるのか

AI要約

「地面師」とは不動産の所有者に成りすまし現金を騙し取る詐欺師のことで、積水ハウスが50億円以上被害を受けた事件もあり話題となっている。

ドラマ『地面師たち』や漫画『オッドスピン』では、犯罪の構造や所有の感覚について探究されている。

双子姉妹が身体を利用して犯罪行為を行う『オッドスピン』では、所有の概念や境界の曖昧さが描かれている。

「地面師」を目指す双子の姉妹が「数億円もの大金」を騙し取るまで…「理解しがたい犯罪」はなぜ行われるのか

「地面師」というものをご存じでしょうか?

不動産の所有者に成りすまし、その不動産の売却を持ちかけて、現金を騙し取る詐欺師のことをいいます。2017年に積水ハウスがこの「地面師」に50億円以上を騙し取られてしまったことでも話題となりました。また、先月7月25日からは、動画配信サービス「Netflix」にて、事件をもとにしたドラマ『地面師たち』が配信を開始し、「地面師」という存在に再び注目が集まっています。

「モーニング・ツーWeb」では、この地面師を目指す双子の姉妹、英(えい)と蛍(けい)を描いたクライム・サスペンス『オッドスピン』が連載中。作者はランダム俳句をテーマにした読み切り漫画「かけ足が波に乗りたるかもしれぬ」が旧Twitter(現・X)でも話題になった菅野カランさん。8月22日には単行本第3巻が発売されます。発売にあわせ、今年2月の第1巻発売時に敢行したインタビューを再編集してお届けします。

本作が自身初の単行本だという菅野さんは、繰り返される“詐欺”という犯罪のなかにある「普遍的かつ完成された構造」に興味を持ったことがきっかけで本作を書きはじめました。被害者の側からではなく、“主体的にその構造に参加していく”犯罪者の側からではないと、その実像に迫ることはできない、と思ったそうです。

「詐欺に限らず、あらゆる犯罪において“社会的に悪いとされていること”をやり遂げることはなぜ可能なのか、そこにどういったモチベーションが働いているのか、ということに興味を持っています」

第1話では主人公が「土地を所有している」という概念に対する、飲み込めなさを表します。

「私、前から思ってたんだけど、土地を『持ってる』ってなんだか変じゃない?」「不動産を所有してるってどういう意味?って思わない?」「だって不動産って地球じゃない?それを『持ってる』ってどういうこと?」(菅野カラン『オッドスピン』第1巻13頁より)

“所有している”という感覚が「ものすごくいろいろなところに影響しているような気がする」という菅野さん。

「例えば、自分の身体はほんとうに自分の持ち物なのか。自分の持ち物なのだとしたら、自分の子どもとか、パートナーとか、そういう近しいところにいる人の身体はどこにあるのか。所有の感覚はどこまで広がっていくのか。ぐるぐると考えています」

双子である英と蛍は、時にお互いに成りすまして指示を出しながら、お互いの身体を利用しながら、犯罪行為を完遂します。そのときの身体は、自分のものでも、相手のものでもなく、自他の境界の曖昧な部分に位置しているように映ります。