恋は盲目 SNS型ロマンス詐欺にご用心! リーゼント刑事 徳島新聞限定コラム第21弾

AI要約

全国で特殊詐欺被害が後を絶たず、最近目立つのはSNS型ロマンス詐欺である。コロナ禍での外出自粛により、バーチャルでの交際が急増し、犯罪者が恋愛感情を利用してお金をだまし取る手口が増加している。

ロマンス詐欺に遭わないための注意点は、相手と実際に会っていないことを確認し、お金に関する話になれば詐欺と疑うことである。

新米刑事時代の話では、自分になりすました詐欺師が結婚詐欺を行っていたが、その犯人を追い詐欺事件を解決した、という一件を描いている。

 おはようさん、リーゼント刑事こと秋山博康です。

 全国で特殊詐欺被害が後を絶たない状況です。2023年の被害額は450億円を超えました。親族を名乗る「オレオレ詐欺」をはじめ、警察官や銀行員を装ってカード類をだまし取る「預貯金詐欺」、さらに「架空料金請求詐欺」「還付金詐欺」「融資保証金詐欺」などさまざまな手口があります。

 最近目立つのは「SNS型ロマンス詐欺」。フェイスブックやX(旧ツイッター)といったSNSを通じて恋愛感情や親近感を抱かせ、お金をだまし取る詐欺事件です。犯行の手口は、マッチングアプリで知り合った犯人からラインなどで投資を持ち込まれ、現金を振り込まされるというもの。 

 ロマンス詐欺が増えた理由の一つとして、コロナ禍で外出が抑制されたことに伴い、自宅内でマッチングアプリなどを利用してバーチャルでの交際が急増したことが背景にあると思います。

 「恋は盲目」と言われますが、それにつけ込んだ犯罪です。

 詐欺の傾向も変わっています。オレオレ詐欺のような話術が必要な手口より、文章で相手をだます手口が増えてきました。闇バイトで雇われた素人のいわゆる“かけ子”の話術が下手ですぐにバレてしまうから、SNSを活用した手口に移っているようです。犯罪グループは、あの手この手で手口を変えながら詐欺事件を繰り返しているのです。 

 SNS型ロマンス詐欺の被害に遭わないための注意点を挙げます。ロマンス詐欺を見抜くポイントは「相手と会っていない」こと。実際に会ったことのない人から▽2人の将来のために▽投資でお金を増やそう▽会いたいから旅費を送って▽荷物を送るから手数料を支払って―などの言葉は詐欺特有の嘘話。本人と主張する写真が送られてきても別人になりすましています。

 ロマンス詐欺に限らず、電話やSNSでお金を振り込みや口座の話になれば、詐欺と思ってください。 

 新米刑事時代の話です。実は、私になりすました詐欺師が結婚詐欺をやっていたことがありました。

 その事件が起きたのは、まだ大鳴門橋が建設中の時です。当時、鳴門署の刑事として日々捜査に駆け回っていました。大鳴門橋という大規模工事だったため、全国から多くの建設作業員が長期間泊まり込みで来県していたのです。

 飯場には全国指名手配被疑者が潜伏している可能性があるので、私は各飯場に足を運び、責任者に名刺を配って聞き込み捜査を行っていたのです。すると、名刺をどこかで入手した詐欺師が私になりすまして結婚詐欺事件を犯していたのです。

 その詐欺師は、あるスナックに毎日通いツケ払いで飲食していました。約半年間で200万円ほどのツケがたまっていたのです。詐欺師は「年末にボーナスで全部支払う」と言い、毎日通い続けて「将来は結婚しよう」とスナックのママをだましていたのです。

 年が明け、ママが鳴門署刑事課へやって来ました。 「すみません、秋山刑事いますか?」とママ。「はい、私です」と近寄ったところ、ママは「誰、あんた?」「あんたと違う」と返され、けんもほろろに無視されました。

 私は不審に感じて相談室にママを案内し、事情を聞きました。説明を受け、私の名刺を利用してママをだました結婚詐欺事件であることが判明しました。私はそのママから詐欺事件として被害調書を代書すると伝えました。

 すると、ママは「恥ずかしいから絶対に被害届は出しません!」と頑なに断ったのです。このままだとママが泣き寝入りするだけだと思い、名刺から犯人の指紋を採取。すると、指紋から結婚詐欺の前歴がある男を割り出したのです。私はすぐにその男がいる建設現場の飯場を特定し、責任者を通じて男を鳴門署へ呼び出しました。

 取調室にその男を連れ込み「俺が秋山博康じゃ!」「ママを助ける本物の刑事じゃ!」と一喝。男は「すみません」と頭を下げました。しかし、ママが被害届を出さなかったので事件化には至りませんでした。

 数日後、ママの店へ飲みに行きました。すると、ママから「秋山さん、あの男がツケの半分の100万円を支払ってくれました。ありがとうございました」とお礼の言葉がありました。そして…、ママはウイスキーの水割りを飲みながら、私の顔をずっと見つめてきます。顔を赤らめ、目がハートになって「本物の秋山刑事と恋がしたかった」 と。私は「詐欺師には気をつけてねー」と言って慌てて店を出て行きました。皆さん、甘い言葉は“嘘話”と疑いましょう。