中国、尖閣に最も近い海軍基地を拡張 海警船増援 主導権狙う

AI要約

尖閣諸島周辺の中国海軍の基地での軍事施設の拡張が進行中であり、海警船も活動を拡大している。玉環基地から尖閣諸島までの距離や基地の整備状況などが報告されている。

基地では艦載機用ヘリパッドの建設や桟橋の延伸、特殊部隊の訓練場整備が行われ、中国の海警局や海軍が軍事活動を強化している。この動きが日本に対する脅威となっている可能性がある。

海警船の活動も尖閣周辺海域での待機や拡大が見られ、中国が主導権を確保しようとしている姿勢が明確化している。日本側も対抗措置を考える必要がある状況だ。

中国、尖閣に最も近い海軍基地を拡張 海警船増援 主導権狙う

尖閣諸島(沖縄県石垣市)に最も近い中国海軍の玉環基地(浙江省台州)で大型船向けの桟橋の拡張や艦載機用ヘリパッド、特殊部隊の訓練場の整備が進んでいることが、シンクタンク「国家基本問題研究所」(櫻井よしこ理事長)が行った衛星写真などの分析で分かった。7月には海警船4隻が同基地で待機する「特異な行動」もあった。

玉環基地は尖閣諸島から345キロ。国基研が独自に入手した衛星写真などを使って分析したところ、中国軍東部戦区海軍(東海艦隊)と海警局東海海区の基地の整備が並行して進められていることが分かった。

2020年ごろから艦載機用ヘリパッドとみられる施設の建設が始まり21年に完了。桟橋も18年2月に長さ350メートルだったものが24年5月には1740メートルに延伸された。装甲車などを揚陸艦や貨物船に積載する施設も設置され、5千トン級の大型海警船や中国海軍の揚陸艦が接岸している。尖閣諸島や台湾への迅速な輸送が可能となる。

海警基地の近くには、海南島の海軍陸戦隊(海兵隊)特殊作戦旅団駐屯地にある武装障害走訓練場と類似した施設が造られている。海警の中でも臨検などを担当する特警部隊が駐屯し、訓練を行っている可能性がある。

海警船は尖閣周辺海域に1カ月間常駐する前後に玉環基地に集結する。任務終了後に玉環島に寄り、母港の舟山基地(浙江省)や上海基地(上海市)に帰港するのが通例だが、7月7日から22日まで海警2101、2102、2103、2501の4隻が玉環島にいた。

尖閣周辺に派遣されている4隻を増援できる態勢を取っていたとみられる。尖閣周辺に常駐する海警船は6月から全隻が機関砲のようなものを搭載するようになった。日本側も何らかの対抗措置を取る可能性があるとみて待機していた可能性がある。待機は尖閣諸島に台風が近づいてきたこともあり解除された。

海警局報道官の発言も変化した。7月10日の海警船2隻の領海侵入を受け、日本側は中国側に厳重に抗議。海警局報道官は11日、「日本側が当該海域での一切の違法行動を直ちに停止することを促す。さもなければ中国はあらゆる対抗措置を取る権利を留保する」との談話を出した。これまで「類似事案の再発防止を促す」との表現を使ってきたが、より強硬な表現となった。

習近平国家主席は昨年11月末、上海市の海警総隊東海海区指揮部を視察し「領土主権と海洋権益を断固として守る」と強調した。習氏は11月中旬には岸田文雄首相と戦略的互恵関係の推進を確認していた。

玉環基地の強化と海警船4隻の待機は、中国が尖閣周辺での主導権の確保を狙っていることの表れといえる。日本としても海上保安庁と海上自衛隊の一層の連携強化が求められる。(有元隆志)