【認知症とお金】「症状が進んだ時」にかかる医療費・介護費の「驚きの額」とは? 骨折や脳卒中などを合併したら負担はさらに増

AI要約

2040年には65歳以上の6人に1人が認知症になると推計されている。アルツハイマー病の進行抑制薬は使えるようになったが、治癒方法は未だ先にある。

認知症になると感染症や脳・血管の病気、骨折など入院リスクが高まり、医療費が増加する。認知症のケアには費用がかかることを専門家が語る。

五十嵐中教授によると、認知症は身近な病気となりつつある。病気の進行はMCIから始まり、本人の自立を支援するためには医療、介護、生活費が必要。

【認知症とお金】「症状が進んだ時」にかかる医療費・介護費の「驚きの額」とは? 骨折や脳卒中などを合併したら負担はさらに増

今から16年後の2040年。65歳以上の6人に1人が認知症になると推計されている。最も多いタイプのアルツハイマー病でいえば進行抑制薬は使えるようになったが、進行した人を「治す」方法の開発はまだ先になりそうだ。

認知症になると、感染症や脳・血管の病気、あるいは骨折で入院するリスクが高まり、より医療費がかかるという現実もある。トータルで見て認知症のケアにいくらかかるのか、専門家に聞いた(知っておきたい「認知症とお金」を2回にわたってお届けします。今回は2回目。1回目はこちら)。

■身近な病気になった認知症

 「私が大学生のころ、認知症といえば『遠くのおじいさん、おばあさんのこと』で、イメージしづらい病気でした」

 そう振り返るのは、東京大学大学院特任准教授で公衆衛生学と医療政策を研究する五十嵐中(あたる)さんだ。それが今では自分の家族や親族、あるいは知り合いなど、身近な病気として実感するようになった。

 認知症は、「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれる時期から、年単位の時間をかけてゆっくりと進行する場合が多い。認知症に移行すると症状は軽度、中等度、高度と進んでいく(※外部配信先では図表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

 MCIの時期は記憶力などが低下しても日常生活にあまり支障はなく、そこから認知症に進む人もいる一方、正常に戻る人もいることが知られている。病気が進んだとしても、本人にはできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で安心して暮らすことが求められている。

 そして自分らしく暮らすためには、どうしても医療、介護、生活にかかる費用が必要になってくる。

■医療費よりもケアにかかる費用が増

 では、認知症になるとどれくらいの費用負担が発生するのか。

 五十嵐さんのまとめでは、中等度の認知症で在宅ケアを受ける場合、診察、投薬、検査などにかかる医療費にざっと月間3万5000円、ヘルパーや入浴介助など頼んだときに生じる公的介護費に11万円、それ以外のインフォーマルケアコスト(公的な制度を使わないケア)に22万円がかかる。合計で月間37万円ほどだ。

 同様に、高度認知症になると、医療費が4万6000円、公的介護費が17万円、インフォーマルケアコストが31万円、合わせて月間52万円かかる(MCIと軽度認知症については1回目をご覧ください)。